スティーブはALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者さんだった。ALSはとても悲惨な病気だ。もしかしたら、1番過酷な病気かもしれない。今まで何百人ものホスピスの患者さんを見てきて、私はそう思う。ALSの患者さんは体がどんどん使えなくなるが、頭は最後までしっかりしている。だから自分の容態が手に取るように分かかるのだ。そして、いずれ瞬きも呼吸さえも困難になる。そんな恐ろしい病気が他にあるだろうか。だからこそ私は、スティーブの言葉に驚いたのだ。 実業家のビジネスマンで成功していたスティーブはまだ50代前半で、昨年突然ALSと診断された。もう歩くことも手を使うことも出来ず1日中寝たきりの状態で、時には呼吸さえ困難な日もあった。そんな時私は音楽を使ってスティーブをリラックスさせるため、彼の好きだったアイルランドの曲をケルティックハープ(アイルランドのハープ)で弾いた。音楽を聞いている間スティーブは目を閉じ