諫早湾一帯は昔から水害に苛まれてきた。 諫早市中心部を流れ、諫早湾に注ぐ本明(ほんみょう)川は28キロしかない日本一短い1級河川。山間部で降った雨水は一気に河口に駆け下りる。ところが、諫早湾は水深8~15メートルと遠浅な上、干満差は6~7メートルもある。満潮と豪雨が重なると本明川の水は行き場を失い、海水と混じって市街地や農地を飲み込んでしまうのだ。 平成9年、諫早湾を全長7キロにわたり閉め切った潮受け堤防は、そんな水害の恐怖と不安から住民を救った、はずだった。 22年12月、福岡高裁は5年間の常時開門を命じる判決を出し、菅直人首相(当時)は独断で上告せず判決を確定させた。潮受け堤防は何らかの異なる司法判断が下されない限り、12月21日午前0時までに開門せざるを得ない。再び住民は水害の「悪夢」に苛まれることになる。 本明川河口から4キロ上流の諫早市仲沖町で生まれ育った町内会長の石原忠幸氏(7