
青木淳悟さんと笠井康平さんのそれぞれの新刊をめぐるダブル刊行記念イベントが、2025年4月6日に青山ブックセンター本店で行われました。 青木さんは、最新刊『憧れの世界――翻案小説を書く』で、言わずと知れたスタジオジブリの劇場アニメ『耳をすませば』を「翻案」しています。 文芸書(単行本)には珍しく、1冊の本に「副題」「巻頭エッセイ」「自作解題」を初めて収録したそうです。版元「代わりに読む人」との企画経緯や、文芸誌の依頼を戦略的に引き受けるコツも教えてくれました。 青木作品から大きな影響を受け、初作品集『さみしがりな恋人たちの履歴と送信』収録作を執筆したという笠井さん。『憧れの世界』が構成の工夫で「『翻案小説を書く』という小説」になっており、そのおかげで(作中の)「観客」の位置が分かりやすいことなどを挙げ、とても親切な作品だと言います。 ふたりの話は、『憧れの世界』が持つスタジオ・ドキュメント
果たして今村太平はアニメーションを愛していたのだろうか。そんな疑問がわくほど、残念なことに、今村にはアニメーターの創造的な役割がまったく想像も理解もできていなかったーー高畑勲 今村太平の『漫画映画論』(1941年)を読書会で読んだ。国会図書館のデータベースで初版が読めるので、基本的にそちらを参照したが、同時にジブリLibrary版(2005年)*1も確認した。この本では前書きでも高畑による後書きにも、今村によるアニメートあるいはアニメーションという仕事の理解の不正確さが指摘されている(冒頭に引用したのもその一文である)。確かに、読んでいくとそう思える箇所も多々あるのだが、高畑が強烈に批判するほど今村にはアニメーターの役割を理解していなかったのだろうか?読書会での議論も踏まえて少し考えてみたい。 なお、本記事では1941年版からの引用は漢数字、2005年版からの引用は英数字でページ数を示す*
こういう記事を読んだ。 fujii-yuji.net 僭越ながら意訳すると、 robots.txtでLLMからのアクセスをrejectするコンテンツプロバイダが増えている(はてなブログも現状はrejectしている) なぜrejectするのかというと、負荷がかかる上に収益を奪われる形になるから しかしそうなるとLLMは古いコンテンツしか参照できない 情報を発信している人が対価を得られるような健全なエコシステムが必要なのではないか この記事では、暗号通貨で面白いことできるんじゃない?ということを話す。私はAIの専門家でもないし、暗号通貨に関してもいろいろ弄っている程度の知識しかないので、色々な意見が聞きたい。 マイクロペイメントとその障壁 現在は読める/読めないという二項対立的な対応をすることしかできないが、もうすこし柔軟に、「相応の対価を支払ってくれたら閲覧を許可する」という挙動を考えるのは
はじめに ブログの書き手としての個人的希望 生成AIの反応 ChatGPT (o4-mini) Claude (3.7 Sonnet) Gemini (2.5 Pro) おわりに はじめに 下記の記事を読んではてなブログも生成AIが直接読むことはできないというのを知って驚いたので実際にこのブログでも試してみました。 生成AIの「URLを読む処理」について考えてみる。 - フジイユウジ::ドットネット 結果としてはやはりその通りだったのですが、ChatGPT, Claude, Geminiでは応答が違って面白かったのでついでに記録しておきます。 しかし自分が書いたブログを読んで調べてもらえないというのは仕組みや理屈が分かってもちょっと変な感じがしますね。Obsidianを使い始めてからは下書きがすべてObsidianにありますし、 Obsidianの下書きをはてなブログに投稿する手順(テンプ
今年も私的ゴールデンウィーク恒例企画である「邦訳の刊行が期待される洋書を紹介しまくることにする」を書く時期となった(過去回は「洋書紹介特集」カテゴリから辿れます)。 本ブログでコンスタントに洋書を取り上げているおかげで、そのエントリをまとめるだけで今回は全35冊(!)の洋書を紹介できるわけである。 Amazon Japan が洋書の取り扱いを止めてしまうのではという心配の声があるが、ワタシはできるだけアンテナを張って、今後も面白そうな洋書を取り上げていきたい(紙版と両方はると数的な制約でリンクが機能しなくなるおそれがあるので、本エントリでは基本的に Kindle 版のみリンク)。 これは毎年書いていることの繰り返しだが、洋書を紹介してもアフィリエイト収入にはほぼつながらないのだけど、それでも、誰かの何かしらの参考になればと思う。 既に邦訳が出ていたり、またこれから出るという情報をご存知の方
gyazo.com strange-fictions.booth.pm 紙媒体でどうしても読みたく、去年は機会を逃したので1月の京都文フリで買った。追加の短編が収録されたDLCまで読んだ。留年経験ならあります。 笹帽子みなみ「全然そうは見えません」 ブログを読んで読みやすい文章を書く方だと思っていたのだけど、ここにきて始めて作品を読んだ。失恋により引きこもり留年した子と新入生とのガールミーツガールで設定もストーリーもシンプルだけど、そういうものをしっかり面白く描けるのがすごいのだとわかる。傘とバトンそして炎、そこから失敗の練習をするというサーカスとダンス、あとは富士山をどちらの県から見るか……というのがタイトルの見た目に重なるのは考えすぎかもだけど、いろんなモチーフが重なり合うのも心地よい。最後の一文とかきまってるけど無理にねじ込んだ感じもなくてよい。ふたりの人間が出会うということも単純に
『みすずの国』はもともと、2014年にフリーゲームとして公開された、個人製作のノベルゲーム(ビジュアルノベル)です。ここから「国シリーズ」という長大な現代大河ファンタジー作品群が始まる第1作目です。 「国シリーズ」に関しては、数年前に紹介記事を書きました。 わたしは大真面目に、国シリーズは人類史に残る傑作だと信じています。 しかし、同人ノベルゲームという非常にニッチなジャンルであるがゆえに、ごく一部の人々にしか知られておらず、いち(にわか)ファンとして歯がゆい思いをしてきました。オンライン上の販売経路がDLsiteやBOOTHに限られていたことも、マイナー作品に留まっている大きな理由でした。 それが、このたび、リメイクされてついにsteamで販売開始する!!ということで、これほど大きな出来事はそうありません。 みなさんがこのnoteを読んでいる頃には、おそらくもう既に発売していると思います
こんにちは、オモコロ編集部です。 突然ですが、世の中には…… という人もいるそうです。 なんで?と思ってしまいそうですが、できないものはできないのだから仕方ありませんね。 一般的には普通のことなのに、なぜか、どうしてもできない。 でも、「できないこと」のひとつやふたつあるのは、むしろ当然なのではないでしょうか? ……とはいえ、胸を張って堂々と「できません!」と宣言する機会もないのも事実。 そこで今回はオモコロ読者から「できないこと」を募集! 普段語られることの少ない「できないこと」について大いに語ろうと思います! 「できないこと」について語るのはこの4人! ヤスミノ:カチカチ進む時計を部屋に置けない(急かされてるみたいでドキドキするから) 原宿:ポイントを集める気がないのに、「ポイントカードいりません」と言うのが苦手 ダ・ヴィンチ・恐山:店員と会話するのが苦手で、どんなに探しているものがあ
ものごとについて説得力を持って書くためには、あなたは良い語り手でなければなりません。ゲームという形式を見下しているような人々にも評価される文章を書きたいのであれば、物語を語ることをあなたの仕事にしなければなりません。物語について物語を語るのです。 https://www.ign.com/articles/2010/07/01/gaming-without-a-safety-blanket 『リトルビッグプラネット』(2009)・Tom Bisselのゲームエッセイ・インタビュー集『Extra Lives: Why Video Games Matter』(2011)の第五章。 【著者紹介】 ・トム・ビッセルは1974年生まれ。もともと自身の海外ボランティアでの経験をもとにしたノンフィクション本でデビューし、その後は小説家としても活躍。*12013年にカルト映画として有名な『ザ・ルーム』を題材
It’s likely that there will never be a site like 4chan again. But everything now—from X and YouTube to global politics—seems to carry its toxic legacy. My earliest memory of 4chan was sitting up late at night, typing its URL into my browser, and scrolling through a thread of LOLcat memes, which were brand-new at the time. Back then a photoshop of a cat saying "I can has cheezburger" or an image of
2013年にロバート・ステッカー『分析美学入門』という翻訳書を出した。 分析美学入門 作者:ロバート・ステッカー,森功次 勁草書房 Amazon ありがたいことにこの訳書はその後いろいろな大学でテキスト採用され、日本の学部教育では今では美学の基本書としての位置づけを与えられるようになっている(まぁ日本語で読める類書がまだないからそうなるのであって、本来はこれに代わるもう少し入門的なテキストを誰かが書くべきなのだが)。 『分析美学入門』は2010年刊行の2nd editionを底本にしている。原著の刊行からはもうもう15年が経った。各トピックの議論はその後もいろいろと発展してきているので、『分析美学入門』の議論はすこし古くさくなっているところがちらほらある(そして2nd editionでも多くの箇所は2005年刊行の1st editionの記述のままになっているので、その意味でも議論が少し古
こんにちは、東京大学の三輪敬太です。 私は2024年度に未踏IT人材発掘・育成事業として「ニューラル言語モデルによる個人最適な日本語入力システムの開発」というテーマで採択され、早稲田大学の高橋直希さんとともにmacOS上の日本語入力システムを作りました。今回はこの中でも中心的な開発テーマの1つであった「ニューラルかな漢字変換システム」の開発と、その成果について紹介します。 かな漢字変換とは? 日本語は通常、漢字やひらがな、カタカナ、数字、アルファベットなど、何千種類もの文字を使い分けて表記されます。これをわずか高々100個強のキーしかないキーボードで入力するために重要になるのが、日本語入力システムによる支援です。 多くの皆さんが使っている日本語入力システムでは、ローマ字を介してひらがなを入力し、それを変換して漢字かな交じり文とします。このひらがなによる入力から漢字かな交じり文を作る部分で行
実は利用されず眠る著作物の価値が再発見でき、著作権者が新たに対価を得るきっかけに繋がる仕組みとして注目🔍 2026年度に誕生する新制度「未管理著作物裁定制度」の内容をシリーズ投稿でご紹介していきます! 第1弾は制度の「対象になるもの、ならないもの」です↓ pic.twitter.com/Fx6ilgt5X3 — 文化庁 (@prmag_bunka) April 10, 2025 もちろん、誤ったことは書いていないのですが、ただ内容を省略しすぎて小出しにしてしまっているせいか、かなり誤解を与えてしまっている印象も受けます。 Xを見ていると、この制度は文化庁が勝手に初めたもの、という勘違いをしている人もいるようですが、この記事冒頭に示したとおり、令和5年の改正で追加された著作権法に基づく制度です。 14日連絡とれなかったら利用OK、ではないまずはこれ。 文化庁のポストで、未管理著作物裁定制度
Friend, Stacie (2008). Imagining Fact and Fiction. In Kathleen Stock & Katherine Thomson-Jones, New Waves in Aesthetics. New York: Palgrave-Macmillan. pp. 150-169. 分析美学のフィクション論入門編になるような論文。そもそも何が論点になっているか、どのような代表的な論者が居るのかを紹介してくれている。ただし最近(2025年現在)はもう少し議論が進んでいるかもしれない*1。 イントロダクション p.150 [Why does it…] 言説がフィクションかノンフィクションであるかによって、私たちのそれに対する反応は変わる。私たちは過去について学ぶために歴史書historyを読むし、ニュースの連続殺人鬼について心配するが、大衆小説のサイ
(はじめに) 一言で言うと【ワンゲームが長いローグライトTRPG】という感じの作品で、ほぼ完成品のようなDemoが約半年前からリリースされていたもあり、このゲームを好むタイプの人間には既に行き届いていると思われるが、万が一を考えて記事を書いた。「未プレイの方に興味を持ってもらう」ことを目的とした紹介記事となる。 スルタンのゲーム? 史上最高にて 最も残虐なスルタン(※)が統治する国があった。 彼は非常にサディスティックで、わがままな王だったが、同時に強大な魔法の力を有していた。彼の機嫌を損ねようものなら、たちまち首が落とされる。そのため、誰も彼に逆らえなかった。 ※ スルタン アラビア語圏で「君主/絶対的な権力者」を指す単語。人名ではない。 スルタンは有り余る金と権力で およそすべてのことをやり尽くし、邪智暴虐の限りをはたらいていた。気まぐれとわがままで臣下をいたぶり、国を振り回していたス
国立国会図書館が所蔵する中国語版の小松左京『日本沈没』(人民文学出版社, 1975)について,その来歴を調査した. 概要 導入 周辺調査 国立国会図書館請求記号から資料の来歴を探る 上海新華書店旧蔵書 中国における出版実態調査 実物調査 当該資料の外見的特徴 内部図書 当該資料の内容 当該資料の出版説明 出版の背景 結論 補論:上海新華書店旧蔵書の再評価 参考文献 概要 国立国会図書館が所蔵する人民文学出版社(北京)が1975年に刊行した『日本沈没』は,上海新華書店旧蔵書コレクションの1冊である.コレクションの特徴,および資料本体の記述内容などから,当該資料は,中国共産党が,当時日本で人気となっていた『日本沈没』を批判的に分析するため翻訳・紹介したものであると考えられる.また,当時の出版状況から,『三体』の著者,劉慈欣が読んだ『日本沈没』は当該資料と同じ版のものであると推察される. 導入
April 11, 2025 森元良太『統計学再入門 科学哲学から探る統計思考の原点』 森元良太『統計学再入門 科学哲学から探る統計思考の原点』(近代科学社、2024年)は、フィッシャー流の検定とネイマン=ピアソン流の検定の間の論争を原典を参照しつつ、言葉遣いに注意をはらいながら整理するという点で、類書がない本であり、勉強になる点が多い。統計的検定を使う時に感じる「うしろめたさ」や「モヤモヤ感」の正体を明らかにしようということで、さまざまな「うしろめたさ」「モヤモヤ感」の候補がいろいろと考察されていく。著者の指摘する「うしろめたさ」「モヤモヤ感」がピンとくる人にとってはうまくはまる本なのかもしれない。 ということで、十分読むに値する本だとは思うのだが、気になる箇所もある。そこで、読みながら気になった点についていつものように大小関係なくコメントしていきたい。なお、統計学の哲学そのものについて
辛いよ 辛い もう現実と 理想の境目で ぼくらの ASIAN KUNG-FU GENERATION「無限グライダー」 あらすじ 翻訳MOD導入方法 ゲーム本体の場所 日本語化パッチの場所 『Clinical Trial』ゲーム内容紹介 どんなゲームか(公式配布ページの紹介文より) どんなゲームか。(初級編) 個人的な感想 使った翻訳ツール 初めてゲームを翻訳した感想 翻訳のいいところ 翻訳のダメなところ ****作品のネタバレ部分についてのメモ**** あらすじ ・いまめちゃめちゃ人気な『Clinical Trial』というフリーゲームを翻訳した。 ・ゲームの翻訳は初めてだったので、ここに覚書を残しておく。 翻訳MOD導入方法 ゲーム本体の場所 homieshouse.itch.io ・↑からゲーム本体(無料)を入手。WinでもMacでもパッチは動作するはず。しなかったら、教えてね。 日本
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