京都女子大学現代社会研究 135 性的モノ化と性の倫理学* 江 要 旨 本稿では、しばしば倫理的に問題があるとされている「性的モノ化(客体化) 」の問題を考 察する。カントの『倫理学講義』に簡単に触れたあと、M. ヌスバウムの議論を検討する。続 いて「モノ化」の(非)倫理性には哲学的な難問があり、 「ポルノや売買春は女性をモノ化す るから不正だ」というように簡単に言いきれるものではないこと、また、 「自由な同意にもと づいたセックスにはまったく問題がない」とも言い切れないことを示したい。最後にセックス の哲学および倫理学の課題について触れる。 キーワード:性的客体化、性的モノ化、性の倫理学、ポルノグラフィー、カント、ヌスバウム “Is sex an autonomy-killing, mind-numbing, subhuman passion?” 口 聡 ― “Yes, bu