イスラエルとパレスチナをめぐって繰り広げられてきた紛争は、不幸にもいまや中東紛争の古典ともいえるほど、1世紀前後の歴史を持つにいたっている。その発端となったのは、ユダヤ人のナショナリズムの一種であるシオニズムである。ホロコースト前の段階で、世界最大のユダヤ人口を抱えていたのはロシア帝国とその継承地域 (主にソ連とポーランド) である。その背景には、ホロコーストに至る反ユダヤ主義の激化があったことは間違いないが、その後のパレスチナでの展開を精査するためには、シオニズムが生まれた現場に立ち返って、さらに丁寧に検証する必要がある。それによって、反ユダヤ主義が具体的にどのように作用し、シオニズムを選択したユダヤ人がいかなる思いを抱えていたのかが見えてくるのである。本紛争を今から解決に導くことはかなりの困難が伴うことが予想されるが、少なくともそこから多くの教訓を得ることは人類にとって大きな課題である