■聖・俗、二つの顔のあいだで 南米出身者としては初となる新しいローマ法王フランシスコ1世が誕生した。 前法王ベネディクト16世が退位するというニュースに接したとき、映画「ローマ法王の休日」が思い出された。いやいやながら法王にされた主人公が、就任を目前にバチカンから逃げ出すという物語は、法王職の重責と高齢を理由にその座を退いた前法王を彷彿(ほうふつ)とさせ、いかなる人物が次に選ばれるのかという好奇心をかき立てた。 前回2005年の法王交代については『ヨハネ・パウロ二世からベネディクト十六世へ』が、当時を冷静に振り返らせてくれる。臆測や期待感を排除した淡々とした記録で、法王の遺言まで載せている。歴代法王やバチカンの基本用語については、マシュー・バンソン『ローマ教皇事典』(三交社・7350円)が参考になろう。 法王の退位はおよそ600年ぶりである。1415年、3人の法王が鼎立(ていりつ)する分裂