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ブックマーク / tmaita77.blogspot.com (11)

  • どの学習指導要領で育ったか

    年が明けました。今年もどうぞ,よろしくお願いいたします。 2015年は戦後70年に当たります。この節目の年のスタートということで,特定の観点から戦後史を振り返ってみようと思います。具体的には,学習指導要領の変遷史の上に,各世代の軌跡を書き込んでみます。タイトルのごとく,それぞれの世代は「どの学習指導要領で育ったか」を可視化する試みです。 学習指導要領とは教育課程の国家基準ですが,その内容は時代ともに改訂されてきています。大よそ10年間隔です。その変遷史をみると,能力主義の考え方のもと,授業時数や教育内容がうんと増やされた時期もあれば,その逆の時期もあります。後者の学習指導要領で育った世代は,「ゆとり世代」などといわれたりします。 どの学習指導要領で育ったかは,各世代の人間形成に少なからず影響していることでしょう。学習指導要領をして「国民形成の設計書」となぞらえた論者もいますが,その規定力(

    どの学習指導要領で育ったか
  • 若者の道徳観の変化

    「権利」「自由」が減り,「親孝行」「恩返し」が増えてきています。ほう。今の若者のほうが義理堅いではないですか。義理を知らない,自己チューとかよくいわれますが,それとは逆の事態をデータは示しています。 この図をツイッターに載せたところ,見てくださる方が多かったのですが,「こういう若者の従順気質の上に,ブラック起業がのさばっているのではないか」という趣旨のコメントがありました。私も同じような危惧を持ちます。昔の若者だったら,大暴れしているかもしれません。 「親孝行」と「恩返し」の選択率は1998年以降上昇していますが,社会奉仕体験活動が義務化されたり,道徳教育が強化されたりした経緯と重なります。現在,道徳を「教科化」しようという動きがありますが,それが実現したら,どういうことになるのか・・・。 今求められるのは,義理や恩返しを重視する傾向が増していることを踏まえて,その上に,「自由」や「権利」

    若者の道徳観の変化
    nebokegao
    nebokegao 2014/05/28
    「「孝行」と「恩返し」がセットで増え,「自由」と「権利」がこちらもセットで減っていく。この傾向に,自分の頭で物事を考えない,機械思考の人間の増殖を見て取ることも」
  • 専業主婦率と母親の虐待率の相関

    児童虐待が社会問題化していますが,虐待の加害者の多くは母親です。2012年度間の児童相談所が対応した虐待相談件数でみると,総数66,701件のうち,加害者が実母であるケースは38,224件となっています。率にすると57.3%です(厚労省『福祉行政報告例』)。 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/38-1.html 子どもと接する時間が長いのは母親ですから,当然といえばそうですが,今回は,母親による虐待発生率が環境条件によってどう変わるかを明らかにしてみましょう。 上記の厚労省資料から,加害者が実母である虐待相談件数を県別に知ることができます。大都市の東京でみると,2012年中の件数は2,452件です。同年10月時点の子ども人口(20歳未満)は202万人。よって,子ども人口1万人あたりの件数は12.1件となります。この値を,母親による虐待発生率をみなしましょう

    専業主婦率と母親の虐待率の相関
    nebokegao
    nebokegao 2014/03/17
    「母親が一人,小さい子と24時間接するのはとても危険なこと/人間は,一つではなく多様な顔(役割)を持ったほうがいいといわれます/「専業主婦ほど虐待をしやすい」という行為命題を導くのは早計」
  • 虫歯と貧困

    米国では,全50州中12州において,成人の肥満率が3割を超えたそうです。肥満率が高い州は,『国勢調査』で明らかにされた,貧困層が多い州とおおむね重なっているとのこと。このことについて,「貧困層が,安く栄養の偏ったもので事を済ませがちなのが主な原因とみられる」と指摘されています。 http://www.asahi.com/international/update/0711/TKY201107110488.html このような肥満と貧困の結びつきは,わが国でもみられるところです。1月12日の記事において,東京都内49市区の小・中学生の肥満児出現率が,各地域の生活保護世帯率と強く相関していることを明らかにしました。その原因としては,上記の記事でいわれているようなことが考えられます。経済的に苦しく,子どもに菓子パンやインスタントラーメンばかりをべさせている家庭も少なくないでしょう。 自然的・風

    虫歯と貧困
  • 首都圏の年収地図

    昨年の12月2日の記事では,東京都内の区市町村の年収地図を紹介したのですが,今回は,首都圏(1都3県)にまで射程を広げたものをつくってみようと思います。 県別ならいざ知らず,区市町村別の平均年収が分かる資料なんてあるのかと思われるかもしれませんが,あるのです。総務省が5年おきに実施している『住宅・土地統計調査』です。この資料から,単身世帯等も含む全世帯の年間収入分布を,区市町村別に知ることができます。 http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/kekka.htm この調査でいう「世帯の年間収入」とは,「世帯全員の1年間の収入の合計」とされています。ボーナスや財産収入等も軒並み含むのとこと。各世帯の年収が正確に把握されているといってよいでしょう。 私は,最新の2008年調査の結果を使って,首都圏218区市町村の平均年収を計算しました。六木ヒルズのある港区(東京)

    首都圏の年収地図
  • 最近の高卒者の進路変動

    水曜日の授業終了後,某機関の記者さんとお話しました。雇用の崩壊,暮らしの破壊の問題を追いかけておられる,「アツイ」お方です。 働く人間のワーキングプア化が社会全体にどういう問題をもたらしているかについて語り合ったのですが,そこで聞いたところによると,最近の高卒者の進路に変化がみられるのだそうです。どういう変化かというと,大学進学者の減少,就職者の増加です。 親世代の所得が低下していますから,進学はさせられない,早く就職してくれ,ということなのかもしれません。なるほど。親世代の収入減(ワープア化)による,子どもの教育機会の剥奪という問題に通じます。 興味を持ったので,文科省の『学校基調査』の統計にあたってみました。下表は,最近3年間の高卒者の進路統計です。①卒業生数,②大学等進学者数,③専修学校進学者数,および④就職者数の推移が示されています。②には短大進学者,③には職業訓練機関等への進学

    最近の高卒者の進路変動
  • 夫婦の就業タイプの国際比較

    世には無数の夫婦が存在しますが,就業という点で分類すると,夫・ともフルタイムでバリバリ働いている夫婦もあれば,夫がフルタイム就業,は家計の補助的なパートないしは専業主婦という型もみられます。わが国では,後者のいわゆる伝統的な夫婦が多いことでしょう。 こうした夫婦タイプの構成がどうなっているかですが,国内の時代比較や地域比較はよく見かけます。しかるに国際比較の資料はないものかと前から思っていたのですが,PISAの生徒質問紙調査のデータを使うことで,実態を明らかにできることを知りました。 PISAとは,各国の15歳の生徒を対象に,OECDが定期的に実施している国際学力調査ですが,対象生徒の生活や意識について尋ねる質問紙調査も含まれています。そこでは,父母の就業状態について尋ねており,①フルタイムで働いている,②パートタイムで働いている。③働いていないが,仕事を探している,④専業主婦(夫)・

    夫婦の就業タイプの国際比較
  • 年収と未婚の関連

    総務省『就業構造基調査』から,有業者の年収と配偶関係の関連を知ることができます。最新の2012年調査の結果をもとに,3つの図表をつくってみました。 http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm まずは,30代後半男性の年収別の未婚率表です。私の年齢層ですが,年収別の変異は如何。最下段の合計には,年収が不明の者も含まれています。 ほう。未婚率は年収とほぼリニアに関連していますね。年収150万未満では,6割以上が未婚者なり。表をよくみると,最も大きな断絶は,年収300万のラインにあります。このラインを下回るや,未婚率が一気に10ポイント以上アップ(34.7%→45.3%)。俗にいう「300万の壁」ってこれかな。 次に,同じデータを他の年齢層についても出し,「年収×年齢」の等高線グラフにて,各層の未婚率の水準を表現してみました。久々に登場の

    年収と未婚の関連
  • 幼子がいる母親の就業率(47都道府県)

    前回は,東京都内の地域統計を使って,幼子がいる母親の就業率と保育所供給率の関連を明らかにしました。分かったのは,両指標の間に強い正の相関関係がある,ということです。 ところで,東京に土地勘がなく,いまいちピンとこなかった方もおられるのではないでしょうか。また,東京という局所(大都市)でいえることがどれほど普遍性を持つのか,という疑問もあろうかと存じます。 そこで今回は,分析の次元を引き上げて,47都道府県のデータを用いて同じ分析をしてみようと思います。保育所の供給が多い地域ほど,幼子を抱える母親の就業率は高いか。県レベルのデータをもとに,追試をしてみましょう。 私が住んでいる東京都を例に,指標の計算方法を説明します。まずは,幼子を抱える母親の就業率です。2010年の『国勢調査』によると,都内に居を構える核家族世帯のうち,6歳未満の幼子がいる世帯は418,670世帯です(末子年齢による)。こ

    幼子がいる母親の就業率(47都道府県)
  • 専攻別にみた博士課程修了生の惨状

    前回は,2012年3月の大学院博士課程修了生について,無業者率と死亡・進路不明率を計算しました。文科省の『学校基調査』では,博士課程修了後の進路として,以下のカテゴリーが設けられています。 http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528 ①:進学 ②:正規就職 ③:非正規就職 ④:臨床研修医 ⑤:専修学校・外国の学校等入学 ⑥:一時的な仕事 ⑦:左記以外の者 ⑧:死亡・進路不明 無業者率とは,⑥~⑧の者が全体に占める比率です。要するに,定職に就けなかった者の比率です。死亡・進路不明率とは,⑧の比率のことをいいます。前回の記事で出した数字によると,人文科学系博士課程修了生の65.3%が無業者,19.0%が死亡・進路不明者という惨状です。 ところで,人文科学系は,文学,史学,そして哲学という専攻を内包しています。これ

    専攻別にみた博士課程修了生の惨状
  • 大学教員社会のジニ係数

    昨年の7月4日の記事では,大学教員の職名別(教授,准教授,講師,助教,非常勤講師)の月収データを使って,大学教員社会のジニ係数を試算してみました。データ・ソースは,2007年の文科省『学校教員統計調査』です。 ところで,資料の統計表をよくみると,何と何と,大学教員の月収分布(5万円刻み)が掲載されいるではありませんか。これを使えば,大学教員社会のジニ係数を,より精緻な形で算出することができます。文科省の『学校教員統計』は,当に「宝の山」です。 2010年の同資料によると,同年10月1日時点の大学の務教員数は172,728人です。下記サイトの表188から,この17万2千人の教員の月収額分布(5万円刻み)を知ることができます。 http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001038417&cycode=0 しかるに大学教育は,大学に

    大学教員社会のジニ係数
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