日本語としての「欲望」の現代的意味は何か。言い換えるなら、現代において日本語で生活してしてる私たちが「欲望」と言うとき、何を言おうとしているのだろうか。 無数の出版物から、「欲望」という言葉が出てくる文章をすべて探し出し、その文脈から「欲望」の意味を推測する・・・などということはできるはずがない。 問い方を変えよう。「欲望」という言葉は、何を指し示しているのだろうか。ドゥルーズは『差異と反復』の第二章のなかで、こう語っている―――行動主義心理学のおかげで、私たちは、動くものの観察しか信用しなくなり、「内観」と言われる仕方に過度の恐怖心を抱いている、と。 「内観」とは、簡単に言うなら、自分で自分の心の状態を観察することである。これは、今では古臭いと思われているヴントの心理学の方法である。心理学を経験科学として確立しようとしたブントはまた、要素主義の立場をとった。彼は、心あるいは意識の諸要素を