前稿((1)なぜ、最低賃金の引上げは所得増に繋がらないか)では、最低賃金の引上げによる時給の上昇が、必ずしも有配偶のパートタイム女性(以下、パートタイムで働く妻)の所得増につながらない実態を見てきた。 その背景にあるのは、税制(所得税・住民税)、社会保障制度(社会保険適用)、配偶者の勤務先から支給される「家族手当」等を意識し、パートタイムで働く妻が、自身の年収を一定額以下になるよう就労時間を調整する「就業調整」の存在である。 ここで、パートタイムで働く妻が「就業調整」を行う際に意識している「年収の壁」を整理してみる(図表1)。ここで挙げた「税金にかかわる壁」と「社会保険にかかわる壁」は公的制度に基づくもので、「「家族手当」にかかわる壁」は勤務先の各企業の賃金制度に基づくものである。 後者に関して、人事院「令和3年職種別民間給与実態調査」によれば、「家族手当制度」がある事業所は全体の74.1