森本あんり氏は神学者で、その研究内容は必ずしも一般向けとは言えない。著作で扱っているのも、キリスト教の教義論争がメインコンテンツだ。なのに、その内容は、いつも同時代の問題意識にぴったりとシンクロしている。『反知性主義』しかり、『異端の時代』しかり。 今回の『不寛容論』も、まさにそういう本だ。 日本人はなんとなく、「キリスト教もイスラム教も、一神教で凝り固まっている連中って独善的だよね。それに比べて、多神教の日本人はずっと寛容じゃん!」と思っている。実際、和辻哲郎、梅原猛、山折哲雄といった哲学系の日本研究者でそう主張している人も少なくない。しかし、森本氏は「それは違う」とはっきり述べている。 2018年に刊行された『現代日本の宗教事情』という本に紹介されている「世界価値観調査」によると、日本は、調査対象となった6カ国(アメリカ、中国、インド、ブラジル、パキスタン、日本)の中で、「他宗教の人を