青い脂 作者: ウラジーミル・ソローキン,望月哲男,松下隆志出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2012/08/23メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 6人 クリック: 393回この商品を含むブログ (54件) を見る 昔の人は、たかが小説のヤワなエッチ描写ごときで発禁だ裁判だと大騒ぎしたもんだが、モロ出しエロ動画がネットでいくらでも見られる現在、もう小説ごときで、下品だエロだ低俗だと騒ぐ時代ではありませんわオホホホホと思っていたところに降って湧いた衝撃作。笑っちゃうくらいのお下劣お下品全開ぶりでありながら(いやまさにそれ故に)いまどき文学への希望と確信を力強く語るという、時代錯誤なのに目新しく、古くさいのに新鮮な代物がこのソローキン『青い脂』だ。 未来ロシアの研究所でスカトロ両刀づかいの変態どもが中露混合の悪態をつきつつ、文学クローンを作って小説を書かせ、謎の物質「青脂」を生
強い通り雨が過ぎて晴天の空が現れたとき、私は小高い場所か、空を広げる場所を探す。太陽を一瞥してその反対の空を見上げる。運が良ければ、そこに虹がある。大空を渡す虹がきれいに見えているなら、円弧の外側に目を向け、もう一つの虹、薄い副虹を探す。虹はしばしば二重になっているのだ。主虹と副虹。そして、その二つの虹の色の順序が逆になっていることを確かめ、すこしうっとりとした気持ちになる。 なぜ、主虹と副虹と色の順序が違うのか? その前になぜ虹が現れるのだろうか。その説明は比較的簡単な物理学で説明できる。もし私の横に同じ虹を見ている人がいて、そのことに疑問を持つなら説明したい。なぜ? 私は虹が好きだし、その仕組みも好きだ。物理学が好きな少年だった。 そうした思いがそのまま本書「これが物理学だ! マサチューセッツ工科大学「感動」講義」(参照)にある。主虹と副虹もきちんと実験を含めて説明されている。そうだ、
【現代語訳】呉秀三・樫田五郎 精神病者私宅監置の実況 作者: 金川英雄出版社/メーカー: 医学書院発売日: 2012/09/14メディア: 単行本購入: 36人 クリック: 943回この商品を含むブログ (7件) を見る 90年前の大正時代にはすでに精神病者に対応するための法制度もある程度はあったし、精神病院なんてものもあったわけだが、むろんみんながそこに入れたわけではなく、相当部分の精神病者――ボケ老人もかなりいるが、25-40歳くらいが大半――は家族が座敷牢を作ってそこにぶちこむしかなかった。その実態を調査したもの。著者の呉秀三は東京帝国大学の医学部の先生。精神病で呉というと、どうしてもドグラマグラを連想してしまうんだけれど、そういう関係はどうもないみたい。 あちこち農村に分け入ってはその実態を淡々と書いており、その収容されている座敷牢の平面図、患者の状況その他がひたすら記録されている
天才を考察する―「生まれか育ちか」論の嘘と本当 作者: デイヴィッドシェンク,David Shenk,中島由華出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/09メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 112回この商品を含むブログ (11件) を見る ぼくがしばらく前に訳した『非才』やグラッドウェル『天才』と同じことを書いた本。生まれつきの天才なんていなくて、みんな努力の結果で、遺伝と環境の両方がきいてくるんだ、という話。つまり、あなたもぼくも、ベッカムになれたし、将棋の名人にも大金持ちにもアキバ48のセンターにもなれたはずなんだけど、努力が足りなかったのよというわけ。 遺伝は何の関係もないというタブララサ説から、やっぱ遺伝も効いてるよ、という話がピンカーなどで普及してきた。そのさらに反動で、いや遺伝よりはその後の訓練その他がずっと効いてるんだ、という説がどっと出てきたのが本書を含め最
槙田雄司「一億総ツッコミ時代」(星海社新書)読了。 著者はマキタスポーツという芸名で知られる芸人さん。相変わらず鋭い視点にうならされる。 本書は、世の中の「ツッコミ志向」に冷水をかける本。 「ツッコミ志向」とは、マキタさんいわく、 自分では何もしないのに他人がすることについて批評、ときに批判すること を指す。今までマキタさんが「東京ポッド許可局」などで主張してたこと(「真っ赤なスポーツカー」論など)を含みつつも、論が一点に集中してるから、ものすごく読みやすい。 芸人さんのツッコミを分析するくだりでは、ビートたけしと松本人志を比較していて、これはこれで興味深い。 マキタさんは「一億総ツッコミ時代」を生き抜くために、二つの方法を提唱する。 ひとつは「ツッコミ志向」から「ボケ志向」になること。 もうひとつは「メタ」から「ベタ」への転向です。 「ツッコミ志向」に対して「ボケ志向」とは、 主体的に、
ギャルと不思議ちゃん論―女の子たちの三十年戦争 作者: 松谷創一郎出版社/メーカー: 原書房発売日: 2012/08メディア: 単行本購入: 22人 クリック: 876回この商品を含むブログ (19件) を見る サブカル内での棲み分けや派閥の抗争、重なり具合に関する、半ば自虐的、半ばナルシスティック、半ば自己参照的な論というのはたくさんある。おたくとナードとギークとジョックとゴスとパンクとチア系といじめっこといじめられっ子の相互力学は、アメリカの高校ドラマの永遠のテーマだ。 なぜそれがドラマのテーマとして成立するかというと――そのドラマの想定視聴者は全員、その力学内に身をさらしたことがあるからだ。だからそれを戯画化し、誇張し、細部を捉え、定式化すると「ああ、あるある」「そう、ああいうヤツ、いたよねー」という共感の基盤となる。 でも、それは基本的には意匠だ。ドラマがドラマとしておもしろくなり
人はお金だけでは動かない―経済学で学ぶビジネスと人生 作者: ノルベルト・ヘーリング,オラフ・シュトルベック,大竹文雄,熊谷淳子出版社/メーカー: エヌティティ出版発売日: 2012/08/27メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 202回この商品を含むブログ (5件) を見る 最近たくさん出ている、行動経済学や幸福研究などの知見を使って、人間が必ずしも金銭欲得ずくの完全合理的に動くわけではないという話をあれこれ紹介した本。かなり多くのトピックをカバーしていて、そうした本の中では決して悪いものではない。要領もいいと思う。こうした本を読んだことがなければ、手に取ってみても損はない。よい本だと思う。 が…… この手の本をすでに読んだことがあれば、「またか」という部分が多々ある。最後通牒ゲームで、人は自分が損をしても不公平(だと感じる)を拒否するので、完全合理的ではありません、人はお金が増
『幸せのための経済学』は題名はやさしい印象を醸し出しており、記述も平易だが、中身は手堅い経済学における規範的分析の入門書。 専門家が記述し、専門家が査読しており、品質は極めて高い。経済状態の良し悪しをどう評価すべきかを、専門用語や数式を極力使わないと言う意味で一般向けに、丁寧に説明している。中学生向けには難易度は高めと評されているが、特別な専門知識なしに読み進められる。 ある政策が正しいかどうかを考えてみよう。それは貧困対策かも知れ無いし、臓器移植の順番待ちのルールかも知れない。治水などの公共投資でも構わない。何かの基準を置いて是非の判断を行うわけだが、どのような基準を置くべきかが問題になる。これは一見、簡単に思えるが、例えば効率と衡平*1を同時に考え出すと、整合性のある基準を作るのが難しくなる。本書で議論するのは、この厚生基準だ。 第1章では経済を、用語定義を交えつつ説明している。第2章
屍者の帝国 作者: 伊藤計劃,円城塔出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2012/08/24メディア: 単行本購入: 43人 クリック: 1,717回この商品を含むブログ (191件) を見る 病床の伊藤が行動記録クリーチャーのフライデーを使って書いた絶筆。その意味で、本書は現実を模倣するものでもある。 伊藤はぼくの関心をかなりなぞっているし、今回も意識の話だというのは聞いていたけれど、まさかまったく別のぼくの関心のほうまで拾ってくれるとは思わなかった。バロウズの座右の銘:Language is a virus from outer space. あるいはもっと正統SFファンなら、アミガサタケの話とでも言おうか。ありがとう。でもそれを核に据えたために、本当の創発的な意識のあり方についての考察が迂回されてしまったのは、ちょっと残念。が、一方でゾンビというものについて、非常におもしろい説
ロシア宇宙開発史: 気球からヴォストークまで 作者: 冨田信之出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2012/08/31メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 383回この商品を含むブログ (3件) を見る ロシアの宇宙技術は、テーマとしてはマニアックながら、アメリカとは別の技術的な系譜として興味深いもの。本書はその歴史を、帝政ロシア(いやそれ以前)からフルシチョフ失脚による最盛期の終わりまで、ロシア語文献を駆使しつつ詳細に記述。英語では標準文献のオーバーグ『軌道の赤い星』も邦訳がない現在の日本では、この分野でほとんど唯一無二の本ではないか。一度回収され、満を持しての刊行はうれしい。 神話化しているロケットの先駆者ツィオルコフスキーの業績などもきちんと相対化し、技術と政治と人間ドラマのからみあいの書きぶりも見事。コロリョフも限界はありましたか……。 いずれ本書の先のミールや他国へ
ちくま文庫の仲間入りでまずはおめでたいことです。といってもまだ発売前なので手にしてません(笑)。以前の単行本のときはろくなコメントをしてないことに気が付き、当時よりもいま現在の方が、より重要な著作だと思いここでご紹介。なぜ重要かというと、一部の心無い(本当に空っぽだと思うが)人たちの生活保護バッシングをみるにつけ、日本の貧困問題へのいわれなき罵倒が目立つからだ。 さて本書は09年9月に初版だから、世界経済危機後一年後に出ていて、ちょうどいまから三年前だ。最初に言い切りたいが、僕が読んできた対談本の中でも屈指の出来だと思う。 飯田泰之さんは経済学者で、雨宮処凛さんは作家で社会運動家的な側面が強い。雨宮さんは当時、プレカリアート運動でも著名だった。なんとなく水と油的なイメージがあるが、本書の対談はかなりかみ合ってて面白い。ただだいぶ編集の手が入っている印象もある。なぜなら同時期に、雨宮さんが佐
社会を変えるには (講談社現代新書) 作者: 小熊英二出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/08/17メディア: 新書購入: 8人 クリック: 352回この商品を含むブログ (71件) を見る 本書の主張は非常に単純で、社会を変えるためには、ちゃんと自分なりの発言をして声をあげ、デモとかにも参加したりしましょう、ということ。 それだけのために、なんでこんな分厚い本(500ページ以上)が必要なのか。まず最初の部分では社会の現状説明なんだけれど、高度成長期から始まってオイルショックでポスト工業社会で、という話。ここで読者が受け取るメッセージはつまり、社会というのは経済に依存する、ということだ。社会を変えるには経済を変える、という話なのか……と思うと、後半になって延々原発の話になるんだけど…… それって関係なくね? いや、著者自身がそれは関係ないことを指摘しているんだ。原発がなぜやめられ
新しい刑務所のかたち -未来を切り拓くPFI刑務所の挑戦- (ShoPro Books) 作者: 西田博出版社/メーカー: 小学館集英社プロダクション発売日: 2012/06/28メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 113回この商品を含むブログ (1件) を見る 十年以上前、本書のテーマとなる、公共施設の整備運営を民間に任せるプライベート・ファイナンス・イニシアチブ(PFI)制度の海外事例を調べたことがある。単なる民間事業委託ではない。事業の自由度を高め、民間の創意工夫の活用で、低コスト高サービスの提供がPFIの真骨頂だ。前例主義や形式主義、事なかれ主義のお役所がそうした自由度を容認するかが課題の一つとなる。 そうした自由度の最もなさそうな刑務所に、この仕組みが導入されたというのには驚いた。 だがそれは、嬉しい驚きではあった。著者はこのPFI制度の導入を機会に、刑務所自体の大幅な改
「クトゥルフ神話への招待 遊星からの物体X」を読んだので、感想を書いとく。 ちょっと前の「這いよれ!ニャル子さん」によるプチ・クトゥルフ神話ブームを受けて出たのかな?と邪推。 ただラブクラフト御大の作品は一作だけ。 代わりに、頼るのにアニメ一作だけでは弱いと思ったのか(これも邪推)、インスパイアされた映画「遊星から物体X ファーストコンタクト」が今年八月に公開されたジョン・キャンベルJrの「影がゆく」を「遊星からの物体X」のタイトルに改題新訳してまず最初の作品として収録(解説によるとラブクラフトへのオマージュとして書かれたのかもということなんだけど、ほんとかなぁ?もしかするとこっちを出すための方便としてクトゥルフが使われたのかもと思わなくもない)。 そしてラブクラフトの「クトゥルフの呼び声」がラスト。 キャンベルJrとラブクラフトの間を埋めるのが、イギリスのラムジー・キャンベルの5作。 「
ท้าทาย เพิ่มเติมประสบการณ์ รวมไปถึงลุ้นเงินรางวัลได้อย่างมีอิสระ บาคาร่า99 ทางเลือกที่จะเข้ามาเติมเต็มให้กับนักพนันทุกคนอย่างทั่วถึง สำหรับคนทั่วไปที่มีความสนใจตัวเกมพนันออนไลน์ อยากจะให้เริ่มต้นกับทาง บาคาร่า99th ที่มีการเน้นบริการเกมพนันยอดนิยมระดับโลกอย่าง Baccarat เกมพนันที่กลายมาเป็นอันดับที่ 1 สามารถครองใจนักพนันไปทั่วโลก เนื่องจากว่าขึ้นชื่อว่าเกมพนัน จะต้องง่ายและหลากหลาย สามารถตอบสนองทั้ง
書誌情報:柏書房,270頁,本体価格1,800円,2012年7月25日発行 消費増税の大罪―会計学者が明かす財源の代案 作者:醍醐 聰発売日: 2012/07/01メディア: 単行本 - 消費税増税法案は可決成立してしまった。「熟議」どころか「未熟議」でことを決してしまった汚点は歴史に残る。自民党政権下で頻発した強行採決と結果においてなんら変わらない。 消費税増税法案をめぐる与党内,与野党間の取引が進行中の最中に出版された本書は,可決成立後の現在でも一読に値する。政府,大手マスコミ,専門家の「大罪」を指摘するだけでなく,マスコミが必ず主張する代案(所得税増税)を示している。消費税増税論の経済活動インセンティブ論,安定した財源論,直間比率是正論を吟味して退け,逆に消費税の逆進性(とその対策として導入予定の「給付付き税額控除」の限界)と転嫁問題を取り上げている。そのうえで財源調達機能と所得再分
クルーグマンの最新刊の山形浩生さんによる翻訳です。山形さんによる解説も適切でいいものです。本書では先行者としてのケインズやミンスキーからの影響がかなり濃厚に出ているように感じました。また大統領選挙が近いという政治の季節を反映してか、クルーグマンの米国の政策批判のスタンスはやはりその影響を抜きにはみれませんね。 本書のテーマは米国など先進国の長期停滞をさっさと終わらせるための処方箋を提供することにある。もちろん本書でいうところの「国債自警団」(財政負担を過剰に警戒する連中)の抵抗は大きいし、各国中央銀行の金融政策の姿勢も相変わらずいまいちから消極的なものまで失望するものだ。 いまの大停滞が悪い原因は、ただ目の前の消費や投資が低迷しているだけではない。クルーグマンは長期的にも悪影響を与えるとしている。1.長期失業のもたらす労働者のスキルなどの腐食効果、2.低い事業投資が継続すると、経済が回復し
昆虫食文化事典 作者: 三橋淳出版社/メーカー: 八坂書房発売日: 2012/06メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 206回この商品を含むブログを見る 虫と言ってもしばらく前に本欄で書評の出た快著『「腹の虫」の研究』は観念としての虫の話だったが、こちらは本当に腹に入れる虫の話だ。ちなみに入門者には日本のバッタの佃煮かラオスのコオロギ炒めが個人的にはおすすめ。イモムシ系はぼくですらハードル高いっす…… 閑話休題、昆虫料理の本は意外と多いが、このシリーズの前著『昆虫食大全』は分厚さも網羅性も群をぬく一冊だった。しかもキワもの紹介に終わらず、各地の虫の正確な同定まで行い、実用性ばかりか専門性も高かった。 が、その続編の本書はさらに踏み込み、世界各地の昆虫食の文化を扱う。料理法や味の分析だけではない。虫の捕まえ方、その職能の社会的地位、文化の基盤となる虫自体の分布や気候特性との関わりや、
ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法 作者: pha出版社/メーカー: 技術評論社発売日: 2012/08/03メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 16人 クリック: 1,642回この商品を含むブログ (99件) を見る 仕事も家庭もつまらない、ネットでだらだらして、人にたかって生きていこう、という本。マンゴー『就職せずに生きる本』とかだと、就職しなくてもなんか社会と自分にとって有益なことをやって生きていける、という内容だったけれど、これはそういうのもなく、とにかくニートとして生きていけばいいじゃん、という。 それですむならいいんじゃないの? ぼくはそういう恵まれた環境にはいなかったので、こういう安楽でぜいたくな暮らしはできないけど。こういうエリート層が可能なくらいには日本は豊かだということがよくわかる。これを読んで救われる人も、いるのかもしれない
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く