「三十路になると、1年経つの早く感じるのは本当の話だよね~」 わたしの横でTさんが、タバコの煙を揺らめかせながら、呟いていた。 「三十路になる自分は想像できなかったけど、いつの間にか、三十路になってるもんなんだよね」 Tさんとわたしは、協力会社のカタログ作成に関する打ち合わせで、午後3時に向かう事になっていた。 車で向かう前に一服したいという事で、わたしはTさんが吸い終わるまで待っていたのだ。 「Mさんも四捨五入すれば三十路だよね。アラサーだよ。でも、本当にアラサーになるのは、27歳を過ぎたらあっという間だよ」 失礼な男である。そんな事は言われなくても分かっている。 その後も、どうでもいい事をぺらぺらと喋りつくしたTさんは、満足したのか、そそくさと運転席に坐り、わたしに出発を促した。 「でもさ~俺らの仕事ってさ、普通の人に説明するの大変じゃない?」 「確かに大変ですよね。未だに上手く説明で