或る日彼女が、【天国への階段】を買ったの、と言った。 * 夕暮れ時にキャンパスを歩いていると、【世界浄化委員会】という奇妙な団体が怪しげな広報活動を展開していた。仮設テントの周りでは数十人の人だかりが出来ており、穏やかな顔で演説する男を囲んでしみじみとしていた。 俺がその様子を眺めていると一人の女性が走りよってきて、よかったら見ていってください、と広報誌を渡してきた。遠慮しながらも見つめるその女性の瞳が少しづつ潤んでくるのを感じて受け取らざるを得ず、喜んでまたテントの方へと戻っていく彼女を尻目に、仕方なく誌に目を通した。そこには【天国へ行ける方法、その正しい手順】と大々的に描かれていた。 それからである、別段俺はその宗教染みた団体に興味を持ったわけではないのであるが、本部と銘打たれた大学内にあるうさぎ小屋のような部室へと足しげく通うことになった。勿論彼女の潤んだ瞳が忘れなくなってしまったた