この年末年始は、実家に帰らなかった。 正確に言うと、帰るつもりで飛行機のチケットをとっていたが、数日前にキャンセルをした。 母にメールでその旨を伝えると、すぐに電話がかかってきた。涙声だった。父を許してやってほしい、という話だった。 秋口に、離婚することになりそうだと伝えた時、父は「明日帰って来い」とだけ応えてぷつりと電話を切った。 わたしは慌てて飛行機のチケットを買って、翌日着の身着のままという感じで文字通り飛んで行った。しかし実際のところ、その時点ではさして危機感を抱いてはいなかった。多少叱られるだろうがそれで済むだろうと思っていた。それどころか、非日常的なトラブルにどこか高揚してさえいた。日焼け止めを塗り忘れたことに気付いて、途中からそればかり気にしていた。 しかし、駅の改札から父の車を見つけ、手を上げて近付いていくと、車のそばに立つ父の表情はかたく強張っていて、思っていたよりまずい