1985年ヨーロッパ旅行中、ロベール・ドアノーに会っていかないかという話が突然まい込んできた。 ヴァンドーム広場に程近いラフォの事務所で待ち合わせ、街の小さなレストランに一緒に向かった。レストランに着くまでの少しの間にもドアノーは被写体でもある八百屋の親爺や、酒場のボーイから気軽に声を掛けられていた。パリの下町に暮らす人々にとってドアノーは、気の良い街の写真屋さんのようであった。ほのぼのとした人柄がパリの街、パリの人々に本当に愛されている雰囲気を感じた。 レストランでのドアノーは実に控えめであったが、初対面の私に対しては何年来の友人のように、親しげにユーモアあふれる話を数多く聞かせてくれた。その洒落た会話のなかのユーモアは、ドアノーの写真のなかに折り込まれているユーモアとまったく同じであり、魅力ある生粋のパリジャンを感じさせてくれた。 そんなドアノーの写真に、私はカメラという機