本のむこうは、森だ。 ブラジルにはordelという名のzineの原型のような本がある。市の屋台で売られていて、粗末な紙に印刷されていて廉価。ほんとうに学びたいという人の手にとどけられる本のスケルトンともいえる。もちろん、こうしたものはフランスにもドイツにもあったが、立派な本へと進化していって、過去のものになってしまっているのに、ブラジルには生き続けている。 「冊」という漢字は、象形文字では同じように、本の原型ともいえる短冊がはじまりで、いくつもになると紐でつなげていたという。奈良博物館の正倉院展で、木を削ったものに文字を書いた「冊」を見たことがある。一冊、二冊、と数える単位にも転用されるようになった。 こうしてみると、遠い過去には、国という枠におさまらないものが、あちこちに同時多発的に発祥してその土地の風土に育てられることになったようだ。 ヘンリー・ソローは、決して反知性主義者でなく、本も