現在公開中の「NORIN TEN 稲塚権次郎物語」を紹介する。 農の神々の出会い 1981年10月7日、金沢市で開かれた日本育種学会30周年記念大会で2人の育種家が初めて顔を合わせた。1人は1960年代に半矮性(草丈の低い)コムギを開発し収量を飛躍的に増大させた「緑の革命」によって当時大凶作となっていたインドやパキスタンの多くの人々を食糧危機から救い、1970年にノーベル平和賞を受賞したアメリカ・ミネソタ州出身のノーマン・ボーローグ博士。そしてもう1人はそのコムギの基となる「小麦農林10号」を育成した日本人・稲塚権次郎(以下、権次郎)である。 ボーローグ博士はこう述べた。 “If I had not had your splendid ‘NORIN TEN’, my research would have never been possible. Thank you so much!” (