吉岡乾さんは、大阪・国立民族学博物館所属のフィールド言語学者。パキスタン北部の山岳地帯で現地調査を繰り返し、消滅危機にある言語の“標本”を続けている。 フィールド言語学、パキスタンの山奥、言語の消滅--。約5000キロも離れた日本で、世界で13番目に話者が多いとされる大言語・日本語を使って日々読み、書き、話している自分からは縁遠いことばかりだ。しかも、吉岡さんはフィールドワークが前提の仕事をしていながら「現地嫌い」を公言している変な人でもある。 好奇心がそそられる。話を聞いてみたい。 というわけで、今回はプロジェクトテーマである人間の死からは一旦少し離れて、「言語の消滅=言語の死」と半ばこじつけるかたちで取材を敢行。言語はどうやって死ぬのか、ある言語が死ぬことで何が起こるのかを吉岡さんに聞きに行った。 ところが、話を聞けば聞くほど「言語の死は人間の死と似ている」と思わされる。 例えば、そも