春になると幽霊屋敷を思い出す。 幽霊屋敷とは今はない私の実家だ。ごく幼い頃に父が建てた。二階建てで、一階が風呂や台所やリビングなど、二階が兄・姉の部屋と私と両親の寝室という構造だった。私の部屋は兄が出ていくまでなかった。屋敷というには狭すぎるけど、それ以外に呼びようがない。 物心ついた時既に怪奇現象ははじまっていた。 深夜、とてつもなく大きなオーケストラのような音がして目が覚める。当時幼稚園児だった私にはどうすることもできず、両親を叩き起こしても彼らには一切感知できなかったので対策のしようはなかった。 おそらく怖がらせないためだと思うが、親は「きっとご先祖様が音楽を演奏しているんよ」と私に説明した。ご先祖様という概念は、チェサ(法事)をきっちりとやり儒教的な考えを大事にする家に育った私にとって馴染みやすいものだったのですんなり受け入れることが出来た。 毎日ではないがオーケストラの頻度はそこ