科学革命の時代、天文学と医学上の発見によって、西欧の宇宙観や生命・身体観が大きく変容した。その一方で見過ごされてきた、大地についての思想たる地球観の変遷を本書は取りあげる。科学史における「足元の盲点」を扱っているといっても良いだろう。 デカルト(René Descartes, 1596-1650)が『哲学原理』 Principia philosophiae で説いた地球の形成プロセスは、現代科学で説明されるそれとは大きく姿を異にする。ミルフィーユのように積み重なった大地の層が崩壊することによって海や山が形成されるというデカルトの「崩落テクトニクス」は、ライプニッツ(Gottfried Wilhelm Leibniz, 1646-1716)にも引き継がれている。 ルネサンスの「ジオコスモス」(地球世界)から飛び立ち、新しい地球観を示した「新哲学」の思想家たちは、デンマーク人ニコラウス・ステノ