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先日、洋泉社から大部の『今野雄二 映画評論集成』が届いた。二〇一〇年七月に自死を遂げた映画評論家今野雄二さんの遺稿集である。 最初は、今野さんとほとんど面識がなかった私に、なぜ送られてきたのだろうと思った。実際に、私が今野雄二さんと言葉を交わしたのは、たぶん、一度きりである。ジョン・ウォーターズの『セシル・B・シネマウォーズ』(00)が公開された際、配給会社のプレノンアッシュが、六本木の焼肉屋で今野さんとジョン・ウォーターズの食事会をセッティングし、パンフレットを編集した私も呼ばれて同席したのだ。その時に、ジョン・ウォーターズがゲイ・セクシュアリティがらみの冗談を連発し、今野さんが苦笑していたのを覚えている。 本書の帯には、「日本のサブカルチャー&カルト映画ブームを牽引した孤高の映画評論家が遺した幻の評論原稿を厳選採録!」という文言が謳われているが、通読してみて、今野さんの批評がもっとも活
先日、雑誌『清流』のために、新作『終(つい)の信託』を撮った周防正行監督にインタビューをしてきた。 『終の信託』は、終末医療の現場で一人の女医の決断が引き起こす事件の顚末を描いた作品で、これまでの明るい大衆的なエンターテインメントを志向してきた彼の映画とは異なり、まるでポーランドのキェシロフスキを思わせる渋く沈鬱なダークなトーンの画面が印象的で、ヒロインを演じた草刈民代のハードなベッドシーンまであるのには驚いた。 思えば、周防さんが、こういう<濡れ場>を撮ったのは、デビュー作『変態家族・兄貴の嫁さん』(84)以来ではないだろうか。 周防さんも、その話題に触れると、「なんだか撮り方を忘れちゃって」などど苦笑していたが、そういえば、私が最初に周防監督にインタビューしたのは、もはや、三十年近く前のことになる。 周防正行監督の『変態家族・兄貴の嫁さん』は、全編のカットが小津安二郎の映画へのオマージ
最近、新作『明日泣く』の公開に合わせ、内藤誠監督の書き下ろしのエッセイ集『偏屈系映画図鑑』(キネマ旬報社)を編集した。内藤監督の東映時代を中心としたメモワールだが、打ち合わせの際、竹中労がプロデュースした山下耕作監督の『戒厳令の夜』のヨーロッパ篇を、実は、内藤監督が撮る予定だったという話をうかがい、急遽、竹中労をめぐる思い出を書き加えていただいた。 というのも、近年、若松孝二の『時効なし』(ワイズ出版)、中島貞夫の『遊撃の美学』(ワイズ出版)といった映画監督の聞き書きによる回想録を読むと、プロデューサーとして関わった竹中労への激越な批判がなされ、長年のファンとしてはちょっとやり切れぬような複雑な想いを抱いていたからである。 伊藤大輔監督が撮るはずだった『祇園祭』をはじめとして、竹中労が製作に関わった映画はなぜか必ずトラブルに見舞われるのである。恐らく、彼が夢想する、あまりに常軌を逸した
毎年、暮れも押しせまり、十一月も半ばを過ぎると、喪中につき年賀欠礼のハガキが届くようになる。いたずらに馬齢を重ねるばかりだが、今年はとくに多いような気がする。そのなかに今年の五月、花田黎門さんの逝去を報せるハガキがあった。 花田黎門さんは、花田清輝のただひとりの御子息で、著作権継承者でもある。レイモンという変わった名前は、むろん、レイモン・ラディゲからとられている。『自明の理』など初期の著作にはラディゲがよく引用されていたことが思い出される。 私は、数年前、『ものみな映画で終わる 花田清輝映画論集』(小社刊)を編集した際に、一度、御自宅に出版の許諾のお願いも兼ねて、ご挨拶にうかがったことがある。 花田清輝のエッセイによく登場する小石川の住宅街にひっそりとある瀟洒なご自宅で、黎門さんからお聞きした生前の花田清輝をめぐるエピソードがゆくりなくも記憶の底からよみがえってくる。 花田清輝の著
本ウェブページ、高崎俊夫の「映画アットランダム」は、すでに連載終了しております。 加筆修正され、国書刊行会から『祝祭の日々: 私の映画アトランダム』として2018年2月27日に発売されました。 このウェブには、未掲載分20本を残しております。 オーディトリウム渋谷で大規模な「ダニエル・シュミット映画祭」が始まった。第一部は彼のほぼ全作を網羅した「レトロスペクティヴ」、第二部はドキュメンタリー『ダニエル・シュミット――思考する猫』、第三部は「ダニエル・シュミットの悪夢―彼が愛した人と映画」と題し、『歴史は女で作られる』『グリード』など彼が偏愛してやまなかった八本の映画が上映される。 先日、『ダニエル・シュミット――思考する猫』の試写を見せてもらった。私は、パスカル・ホフマンとベニー・ヤールがチューリッヒ芸術大学大学院の終了制作として撮った、この優れたドキュメンタリーを見て、さまざまな思いに耽
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