どの宗教でも結局は同じことだ、とよく言われる。 「分け登る、ふもとの道は異なれど、同じ高嶺の月を見るかな」 登る道が違うだけで、目標も到着点も同じだ。ある宗教は神といい、ある宗教では仏という。ある宗教では観音と言っても、名こそ異なるが、所詮は同じものを言っているのだろう。だから、どの宗教を信じても結果は同じだと放言する人がある。 これは全く宗教に対する無知からくる、無責任極まる暴言である。 特に、このようなことを言う人はインテリ階級と呼ばれる連中に多いが、これこそオルテガ・イ・ガセットの名言「学問ある文盲の徒」と言うにふさわしい。 近代の日本人は、宗教に関しての知識が余りにも幼稚であることは有名であるが、ここに面白い実話がある。 ある人が、ある宗教の信者から、 「信仰というものは理屈じゃないから、何も考えずに素直に信心しなさい。必ず、大きなゴリヤクがあるから」 と熱心に勧誘された。 信心は