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災害への備え
www.wound-treatment.jp
【炎症が治まらないと切開はできない】 こう説明する先生もかなりいるような印象です。私の外来で治療をする粉瘤患者の1/3くらいは他の病院で治療を受けていてその後当科を受診されていますが,そのほとんどが前医でこのような説明を受けています。 正解は「炎症がひどいときほど切除しやすい。化膿しているときこそ治療しやすい。炎症が治まるまで待つ必要は全くない」です。「炎症を起こしているアテロームの被膜は周囲組織からほとんど遊離していますが,炎症を起こしていない被膜は周囲組織に固着している」からです。だから,炎症が起きているときほど被膜は簡単に除去できますが,炎症を起こしていないアテロームでは被膜は摘んだくらいでは取れないことが多いのです。 つまり,「炎症最盛期のアテロームは治療に最適期」なんですね。 【化膿している粉瘤は麻酔が効かない】 感染している粉瘤の患者さんに「麻酔をして切開します」というと5人に
次のような質問を受けた。 「外傷の消毒は不要」「消毒しても感染予防にはならない」と言うが,19世紀の半ば,手術創を消毒する事で感染率を劇的に下げたと言う事実と矛盾するのではないか? もっともな疑問だと思う。この「消毒による術後敗血症の克服」の経緯については,かの名著『外科の夜明け』に詳しく書かれていて,私も何度も取り上げている。産婦人科医のゼンメルワイスが分娩の前に消毒薬で手を洗っただけで産褥熱が劇的に減少し,リスターが手術創や外傷の創を消毒薬の石炭酸で処置し,術後の敗血症による死亡が劇的に下がったのは紛れもない事実である。確かにこれだけ見ると,私の主張と矛盾しているように見える。 『外科の夜明け』を素直に読めば,「傷を消毒する事で感染率が下がった」となるはずだ。だが,事実はそれほど単純ではない。 消毒薬として石炭酸は決して強力なものではなく,むしろ非力な消毒薬剤に過ぎない。だから現在,石
「傷は消毒しない方がいいというのはわかったが,破傷風の存在を忘れているのではないか。破傷風の事を考えたら,やはり消毒は必要ではないか」このような質問を時々いただくので,それへの回答を書く事にする。 まず破傷風についての基礎知識については次のサイトで十分だろう・・・というか,これだけ知っていたら専門家でしょうね。 http://idsc.nih.go.jp/kansen/k02_g1/k02_15/k02_15.html 要するに破傷風は,破傷風菌が体内に入って神経毒素を産生し,強直性痙攣を引き起こし,呼吸障害を起こすなどして死に至る疾患である。現在,国内では年間30~50例が発症し,死亡率は20%~50%と極めて高い。一旦発症してしまったら筋痙攣に対する対処療法を行なうしかなく,受傷直後に破傷風ヒト免疫グロブリンを投与するのが最も効果的である。 破傷風菌は土壌中に存在する嫌気性菌であり,通
シャンプーの問題についてこれまでちょっと書いてきましたが(2007/03/29,2007/05/31,2007/06/08の更新履歴参照),その後もわが身を犠牲(?)にしての人体実験を続け,次のようなことが明らかになり,今後どうしたらいいかも次第に見えてきましたので,ちょっと書いてみます。 【シャンプーを使わずに温水のみの洗髪にして何が変わったか】 頭皮の痒みが全くなくなった。 抜け毛が劇的に減少した。 フケがほとん出なくなった。 当初「「脂で髪がベタベタするのでは?」と心配したが,毛髪が自然な感じにサラサラになり,杞憂だった。 というわけで,少なくとも私に関する限り,抜け毛が劇的に減少したことが一番嬉しかったことです(・・・何しろもう50歳だから・・・)。これは,お風呂場の排水口の入り口にあるネットに引っかかる髪の毛の量が,以前とは全然違っていることから証明できます。また,痒みもほとんど
どんな分野についても同じだが,定説とされる考えを真っ向から否定し,新たな説を打ち立てようとする本を読むのは楽しいものだ。場合によっては,その考えはその後否定されることもあるだろうが,とりあえず本の読み手としては昔ながらの定説・常識を繰り返し書いてある本よりは読んで楽しいことは事実だ。また,その後に否定された考えであっても,そこには往々にして,常識に捕らわれない豊かな発想があるし,常識人が見逃している視点が示されていることがあり,発想法を学ぶのに最適なのだ。 本書の内容についても,現在の考古学や縄文研究でどのように扱われているのか,普及しているのか,否定されているのかもわからないが,少なくとも本書を読む限り,その論理の展開は明晰だし,発想は地に足が着いているものだと思う。そういう意味では,出会えてよかったなと思えた一冊である。 ちなみに本書は1986年にハードカバー本として出版され,その後絶
何と,水虫(足白癬)がラップとワセリン,プラスモイストで治ったという報告をいただきました。報告してくださったのは,当サイトの読者の方で医療は素人の斎藤さん。 以下,斎藤さんからのメールと証拠写真です。 4年ほど前から足の水虫と皮膚科医より診断され,アスタットやボレークリームなどを処方されましたが,いずれも皮膚がかぶれて治りません。その後,ラミシールクリームを処方されましたが,翌日より炎症を起こし,差し込むような痛みだけがなかなか取れませんでした。 湿潤治療は以前から自分で行っていてその効果がわかっていますが,さすがに「水虫菌は湿った環境が大好き」という知識がありますので,最初はためらいましたが,思い切ってラップとワセリン,一部プラスモイストで治療をしてみました。直ちに痛みも痒みもなくなり,数日で治癒してしまいました。 私もこのメールをいただくまで,さすがの湿潤治療も水虫には駄目だろう,これ
なんと言う気宇壮大にして緻密な本なのだろうか。大伽藍のような威容を誇りながら,細部にいたるまでに精緻な論理が張り巡らされている。一点一画もおろそかにしない厳格さと,全体を一つの作品としてみたときの美しさが,極めて高い水準で実現されている。恐らく,私がこれまでで出会った科学書で最高の書,最善の書の一つだ。 一つの物事に着目して,それで地球の歴史や生物の歴史を解きほぐす本に出合えるのはとても楽しい。例えば,これまでに紹介した本で言うと,『鉄理論=地球と生命の奇跡』,『『生と死の自然史 ‐進化を統べる酸素‐』,『銃・病原菌・鉄』などがそうだ。 ミトコンドリアとは何か。もちろん,ちょっと生物学を知っている人なら誰でも知っている。酸素呼吸をしてエネルギーを作り出す役割をしている細胞内小器官である。かつては自由生活をしていた細菌だったが,いつかの時点で別の生物に取り込まれ,ミトコンドリアとして働くよう
【目 的】 熱傷治療で広く使われているのがゲーベンクリーム(R)だが,実は「浅い熱傷には使用してはいけない」という注意事項があるのに,それを知らずに使っている専門医がかなり多いのが現実だ。また,この薬剤は熱傷以外にも,広く感染創の治療に使われている。 一方,この薬剤が創面に対してどう作用するかについてを調べた実験は存在しない。ならば自分でやるしかない。 【Material and Method】 自分の左肘部屈側を実験部位とし,ガムテープを30回連続で張って剥がし,角層損傷を行った。ここを二等分して尺側をゲーベン塗布,橈側を乾燥部位とし,一日に4~6回,実験部位を洗ってゲーベン塗布し直した。実験は2008年2月29日に開始し,結果が得られるまで続けた。 観察は実体顕微鏡Dino-Lite Plusで行い,拡大率は60倍とした。 【結 果】
Top Page 【プラスモイストって何?】 筆者と瑞光メディカル(株)で共同開発した治療材料。 【問い合わせ先】 株式会社 瑞光メディカル 倉田修平 大阪府摂津市鳥飼上4-3-50 電話:072-653-8877, Fax:072-653-8876 plus_moist@zuiko.co.jp 【特 徴】 創面に固着しない(写真の白い面は非固着性メッシュ) 浸出液の吸収能力がある 創面を乾燥させない(肌色の面は疎水性) 薄くて柔軟(厚さ1ミリ) 「手術用被覆・保護材,または熱傷被覆・保護材」という位置づけであるが,医師の裁量で種々の創面に使うことは可能である。 【治療例】 プラスモイストによる治療例はこちら。 熱傷,擦過創,挫滅創,指尖部損傷,深い皮膚軟部組織欠損,褥瘡,術後離開創,水疱症,伝染性膿痂疹,帯状疱疹,術後創のドレッシングなどに,患者の同意を得て使用しているが,従来の創傷被覆
青空文庫をご存知だろうか。著作権が切れた国内の文学作品をテキストファイルにして,誰でも自由に閲覧できるようにしようという素晴らしい活動をしている団体だ。実際,絶版になり図書館でも滅多にお目にかかれないような文学作品が簡単に入手でき,誰でも読めるようになった功績は大きい。要するに,無料のデジタル図書館である。 そして,青空文庫は10周年を記念して,6500作品を収めたDVD-ROMを全国の図書館に寄贈するという計画を持っているらしい。これは図書館にとってもメリットだろう。何しろ6500冊の膨大な書籍がDVDに収録されているのだから,場所もとらないし,検索も簡単。また最近ではDSやPSP,あるいはMP3プレーヤーやポータブルメディアプレーヤーでも読めるようになったため,非常に便利だろう。 なぜ青空文庫の話を最初に振ったかというと,本家の青空文庫とは違って「楽譜青空文庫計画」はことあるごとに楽譜
すっかり講演会慣れしてしまい,次にどういうところで受けを狙うか,それしか考えていない私ですが,そういう目で他人様の講演や発表を見ると,聞いていてつまらないというか印象の薄いものがとても多い事に気付く。実際,この発表を聞いて欲しい,この内容を理解して欲しい,という基本的な姿勢が感じられない発表(講演)が非常に多いように感じてしまう。 なぜその発表の印象が薄いのか,理解しにくいのかについて系統だてて教えてくれる人はあまりいないだろうから,私のスライド作りと発表のノウハウを大公開してしまおう。 もちろん,そんなの必要ない,お前に教えてもらうことなんてない,という方はどうぞ,読み飛ばしちゃって下さいね。 まず,私が考える「人に聞いてもらうための学会発表」の条件を列記する。 1分間に最低でも2~3枚のスライドを映す。同じスライドを長々を映さない。 1枚のスライドの行数は7行以内。 スライドに書いてあ
さて,熱傷の局所治療についても方針をまとめることにする。小範囲の熱傷から広範囲熱傷にまで適応できる治療原則である。なお,ここで述べる方法は従来の治療法を全て無視したものであることは言うまでもないと思う。従来の熱傷局所治療が全て間違っていたからこそ,ここで新しい治療法を提案するものであるからだ。 何で創面を覆うか? 広範囲熱傷では食品包装用ラップ(サランラップでもクレラップでもよい。もちろん,ビニールの風呂敷だっていい)で創面を覆い,ラップの上はガーゼか紙おむつで覆い,浸出液を吸収する。ラップはアセモを作りやすいので,傷の周りの皮膚をよく洗うようにしたほうが安全。 ラップは滅菌する必要はない(ラップの製造過程から考えて,市販されているラップに細菌が付着している可能性はほとんどゼロである)。 「褥瘡のラップ療法」で使われているOpWT(穴あきポリ袋+紙おむつ)で創面を覆うのも効果的。ラップ単独
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