ドイツではユダヤ人差別は問答無用で糾弾される。しかし、5月に開かれたイスラエルに抗議する合法デモが、ユダヤ排斥を叫ぶ違法デモに変わるということが起きた。在独作家の川口マーン惠美さんは「2015年以降、難民として中東から移り住んだ人々の中から新たな『反ユダヤ主義』が生まれていることも一因だ」と指摘する――。 停戦前の戦場に駆けつけた独外相 5月20日、イスラエルとパレスチナの間でミサイルが飛び交っていた最中、ハイコ・マース独外相はイスラエルを訪問し、ミサイル攻撃で破壊されたばかりの瓦礫の中に立っていた。彼がイスラエル国民に伝えたかったのは、ドイツ人のイスラエルに対する強い連帯の情であり、それは、その後、テルアビブでネタニヤフ首相と交わした力強い握手によっても、しっかりと伝えられたはずだ。 マース外相は前々から、学生時代に強制収容所を見学したことがきっかけで政治家になろうと決心したと語っていた