懸案だった「処理水」の海洋放出が始まる。だが、含まれる物質の特性を考えれば、なぜもっと早く放出できなかったのか疑問が残る。 「特段大きな問題はないと評価できた」。原子力規制委員会の山中伸介委員長は7月初めの記者会見でこう強調した。同委員会は政府による東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出について関連設備の使用前検査の「合格」を示す終了証を東電に交付した。 国際原子力機関(IAEA)からも「処理水の放出が人と環境に及ぼす放射線の影響は無視できるほどわずか」とのお墨付きも得た。中国は反発しているが、米国や韓国はこれを支持。欧州連合(EU)も日本産食材の輸入規制を解除する方針だ。 処理水を測定する設備の検査は3月に合格済みで、放出用の海底トンネルを含む工事も完了。設備面での放出条件はすべて整った。政府は8月にも放出を始める計画だが、遅きに失したと言わざるを得ない。処理水に含まれる「トリチ