「戦争研究所(ISW)」は、ロシア・ウクライナ戦争の戦況を日々レポートしているが(「ISW」HPより) ウクライナの戦況分析で欧米のクオリティペーパーが頼みにする「戦争研究所(ISW)」は、かつて論客として名を馳せたロバート・ケーガンの一族を筆頭にネオコン人脈が設立と経営に深くかかわっている。ISWの若い研究者たちにとってはイラク戦争時の「情報のクッキング」など歴史上の出来事かもしれないが、ベテランの軍事アナリストらの間ではISWは「ウクライナ軍のパフォーマンスに過度に楽観的だ」との批判もある。メディアは過去の教訓を忘れるべきではないだろう。 古今東西を問わず戦争報道は困難を伴い、往々にして真実が犠牲になる。20年前、ジョージ・ブッシュ(子)米政権はインテリジェンスをねじ曲げて、イラク戦争へと扇動した。 当時ブッシュ大統領は自ら、開戦の約半年前に「イラクが生物・化学兵器をテロ組織に渡す恐れ
ドイツがウクライナへの戦車の供与をようやく決めた。決定に長い時間がかかった背景には、オラフ・ショルツ首相の、ロシアから交戦国と見なされることへの強い懸念、さらに「独り歩き」を避ける戦後ドイツの伝統的な外交政策がある。 1月25日、ドイツ政府は同国製のレオパルト2・A6型戦闘戦車14両をウクライナに供与すると発表した。120ミリ砲弾も供与する他、乗員の訓練も担当する。機動性と火力、防御力のバランスが取れたレオパルト2は、現在世界で最も優秀な戦車の一つで、欧州の13カ国の他、カナダ、シンガポール、チリ、インドネシアで合計約2100両以上が使われている。 ドイツ政府は、ポーランドやオランダなどが保有しているレオパルド2をウクライナに供与することも承認した。さらにドイツ政府は、2月7日には、旧式のレオパルト1も178両、ウクライナに供与すると発表した。 ドイツが見せた優柔不断に批判集中 だが戦車供
2月24日のロシア軍侵攻から1カ月余りで制圧されたウクライナ東部の要衝イジューム。9月以降のウクライナ軍の巻き返しにより、同月10日にロシア軍はそこから撤退を余儀なくされた。残されたのは砲撃によって廃墟と化した街並みと、暴力の痕跡を残す多数の遺体だった。ジャーナリスト村山祐介氏の現地レポート。 ウクライナ東部ハルキウ州のイジュームで見つかった集団墓地から、子ども5 人を含む447人の遺体が掘り出された。ハルキウ州政府によるとほとんどが民間人で、30体には首や手が縛られているなど拷問の痕があり、男性器を切断された遺体も数体あったという。市内の警察署の地下室には、ガスマスクや縄、木の棒が雑然と置かれた「拷問部屋」も見つかった。ロシア軍が占領していた約5カ月の間に、戦略的要衝の地で何が起きていたのか。 死臭があふれ出す林 イジュームの町の入り口に位置する松林の奥は、腐った肉と湿った土が混ざり合う
2022年3月17日、ドイツ・ベルリンのドイツ連邦議会で演説するウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(C)EPA=時事 経済の血液であるガスが人質となり、プーチン露大統領は「ものづくり大国・ドイツ」の生殺与奪の権を握っている。シュレーダー・メルケル両政権が政経分離で推進したエネルギー重商主義は、ほどなく「中国依存」というさらに死活的な問題にも直面する。 ドイツの対ロ政策の失敗を、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領が端的に表現した言葉が、私の心に残っている。彼は3月17日にドイツ連邦議会の議員たちに向けてリモート演説を行った。日本の国会議員に向けたリモート演説とは異なり、ゼレンスキー大統領の言葉は鋭い批判に満ちていた。 「我々は戦争が勃発する前に、ロシアがウクライナへの侵攻を思いとどまるように、厳しい経済制裁措置を発動してほしいとあなた方に要請した。しかしあなた方はロシアとの貿易を
ドイツで新型コロナウイルスの感染爆発が起きている。今年11月上旬以降、新規感染者数が急増し、西欧で最もコロナ禍が深刻な国になった。市民の油断、ワクチン接種率の低さ、ブースター接種の遅延、連邦議会選挙によって生じた権力の空白期間における政府の後手に回った対応が原因だ。 毎日7万人を超える新規感染者 国の感染症研究機関ロベルト・コッホ研究所(RKI)によると、11月25日には7万6414人という同国で最多の新型コロナウイルス新規感染者が確認された。前週に比べて約2万3000人の増加。最悪の記録が毎日更新されていく。10月1日の新規感染者数は1万934人だった。つまり約2カ月間で約7倍に増えたのだ。 11月25日の死者数は、357人にのぼった。前週に比べて78%の増加だ。パンデミックが始まってからの累積死者数は10万人を超えた。日本(1万8352人=11月24日時点)の5.4倍である。 直近1週
約210選挙区で実現した野党候補の一本化によって、安泰とは言えない自民党。岸田首相が掲げる「与党で過半数(233議席)」が獲得できても、再び政局になりかねない情勢だ。 衆院選が10月19日に公示され、12日間の与野党対決が幕を開けた。 自民党では、菅義偉前首相の退陣で政党支持率が10ポイント近く改善し、「大敗はなくなった」などと楽観視する向きがあるが、事態はそう簡単でない。 立憲民主党と共産党などによる候補一本化の影響が広がっており、当落線上で苦しむ自民候補が50人近くいると見られる。自民の負け幅が大きくなれば、船出したばかりの岸田文雄首相の求心力に重大な影響が出かねない。 自民党調査で激戦区が50以上 「かなり気合を入れて回らないと大変だ……」 自民が衆院選に向けた候補者調整を終え、2次公認を発表した同月15日。首相は党本部で甘利明幹事長、遠藤利明選対委員長と向き合いながら、こうこぼした
「最も古いビジネスの一つである日本郵政と、1997年に生まれたネット・ベンチャーの歴史的な提携」――。3月12日に発表された楽天グループの2400億円増資は、楽天モバイルを5G時代のフロントランナーへと一気に押し出す可能性がある。ネットとリアルのビジネスが国境を越え融合する新たなフェーズが始まった。 想像してみてほしい。全国津々浦々、2万4000局の郵便局にスマホを持った米倉涼子が微笑む「楽天モバイル」のショッキング・ピンクの、のぼりがはためく様子を。NTTドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクの首脳陣は、恐らく眩暈を覚えることだろう。 のぼりがはためくかどうかは定かでないが、全国の郵便局で楽天モバイルの加入手続きができるようになるのは間違いなさそうだ。料金値下げで楽天モバイルに煽られている携帯電話大手3社にとっては「悪夢」としか言いようのない組み合わせである。 3月12日、楽天グループは
12月9日、連邦議会での演説で、珍しく感情を露わにコロナ対策への協力を訴えたメルケル独首相。その思いは国民に届くのだろうか (C)EPA=時事 ドイツのアンゲラ・メルケル首相が12月9日に連邦議会で行った演説は、歴史に残るだろう。普段は冷静沈着なメルケル首相が、珍しく感情を露わにして国民に対しコロナ対策への協力を求めたからだ。普段のポーカーフェースを脱ぎ捨てた、彼女らしからぬ演説は、今日のドイツの事態の異常さを際立たせた。 「努力は不十分だった」 この演説のテーマは、2021年の予算案だった。メルケル政権はパンデミックによって経済界が受けつつある打撃を緩和するために、あえて巨額の借金を行って市民や企業を支援している。例外的に財政赤字が急増するが、その必要性を国民に説明するのが狙いだった。
毎日新聞社には1週間の猶予を設けて対応を求めてきたが、残念ながら対応はなかった。6月26日、東京地方裁判所に訴状を提出した。 一連の『毎日新聞』報道を受け、野党合同で6月14日に「国家戦略特区利権隠ぺい疑惑追及 野党合同ヒアリング」が設立されている(通称「野党PT」)。26日に早くも第5回会合が開催され、今日27日の毎日新聞22面で記事になっている。なお、確認する限り、ほかの大手紙では記事になっていないようだ。 毎日新聞記事によれば、非公開の会合に委員謝金が支払われ、その会計経理書類は5年間の保存義務があるはずだが、内閣府は「記録が残っていない」と主張していた、といったことが焦点になっているらしい。 当初の「利権隠ぺい疑惑」とだいぶずれてきた印象だが、それはともかく、会計経理書類のチェックは大事なことだ。金額の多寡にかかわらず、誤った公金支出がなされていないかのチェックは欠かせない。そのた
日本銀行は昨年11月13日、「引当金制度に関する検討要請について」なる文書を発表した。その内容は、「『量的・質的金融緩和』の実施に伴って生じ得る日銀の収益の振幅を平準化し、財務の健全性を確保する観点から、麻生太郎財務大臣に対して、引当金制度による対応の検討を要請した」というもの。この発表は、マスコミの取り上げ方も小さく、市場でも話題にはならなかった。 だが、これは黒田東彦総裁の進める「量的・質的金融緩和」(以下、異次元緩和)により、日銀の財務が不健全になりつつあることを自ら吐露したものであり、非常に重大な意味を持つ。そして11月20日、閣議において日銀の引当金積み増しを可能にする政令改正が決定した。これにより、日銀は異次元緩和の実施に伴って生ずる損失に対して、引当金を積むことが可能になった。
いま中東は「大戦」と呼ぶほどの戦乱状態にある。米軍とイランなどが過激派「イスラム国(IS)」掃討作戦を展開、イエメンなどで国家破たんが相次ぎ、中東全域で戦闘やテロが発生しているのだ。他方、欧米など6カ国はイラン核問題の枠組み合意にこぎ着けた。 まず、イランの核問題だ。米国、日本など先進7カ国(G7)は先の外相会議で、従来の対イラン政策を大きく転換していたことが分かった。 これまでイランは、制裁対象として西側から非難される一方だった。だが、今回のG7議長声明はイランに対して「責任ある建設的な役割」を担い、「積極的に貢献すること」を強く求めているのだ。 シリア内戦の政治的解決、イラクにおける和解への貢献、イエメンの当事者間の対話などを促進するようイランに支援を要請している。 だが、これによって、事態はさらに複雑化した。イランが国教とするイスラム教シーア派勢力とサウジアラビアなどのスンニ派の対立
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