必然としての「対立」 本連載のテーマは「対立」です。古今東西、老若男女の著名人のみならず、私たちの日常で身近な人から聞かれる数々の「名言」を取り上げて、そこに潜むさまざまな対立構造を読み解くことで、世の中の仕組みや人としての考え方を明らかにしていくことが本連載の目的です。 ではなぜ「対立」を取り上げるのか? それは人間の思考回路の根本にそのような対立構造が潜んでいるからです。人間がさまざまな視点で「◯◯である」といった形で考えるとき、そこには暗黙のうちに「〇〇でない」ものとの比較という形での視点が入っているのです。 私たちが何気なく使っている言葉の定義に関しても、「◯◯である」ことを明確にするためには必ず、暗に「◯◯でない」ものとの区別をしています。このことは、意識しないとなかなか認識することができません。例えば「犬」という言葉を定義するためには、その定義によって明確に「犬でないもの」との