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大谷翔平
nina313.hatenablog.com
「シュルレアリスム」という言葉をどうも理解していないと感じていた時に、書店の棚から抜き出した一冊。講演形式になっているから、読みやすそうだと思って手に取り、買ったそのままの足で喫茶店に入って読み耽った。 シュルレアリスムとは何か (ちくま学芸文庫) 作者: 巖谷國士 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2002/03 メディア: 文庫 購入: 13人 クリック: 876回 この商品を含むブログ (46件) を見る 巖谷國士『シュルレアリスムとは何か』ちくま学芸文庫、2002年。 「これは名著だ」とはっきりと断言できる一冊である。腰を据えて目次を開いた時には、本当に驚いた。自分の興味のあることしか書かれていない本だったのだ。この本は三部構成になっていて、第一部が「シュルレアリスムとは何か」、そして第二部が「メルヘンとは何か」、さらに第三部は、何と「ユートピアとは何か」だったのである。 元
サイードが『知識人とは何か』の中で紹介していた「知識人を扱った小説」の最後の一冊。ツルゲーネフの『父と子』とジョイスの『若い藝術家の肖像』を越えて、ようやくこのフロベールの『感情教育』に辿り着いた。 感情教育 上 (河出文庫) 作者: ギュスターヴ・フローベール,山田ジャク 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2009/09/04 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 9回 この商品を含むブログ (7件) を見る ギュスターヴ・フロベール(山田ジャク訳)『感情教育』上下巻、河出文庫、2009年。 知識人を追い続けて早一ヶ月が経った。「追い続けて」と言っても実際は二冊の古典作品を読んだだけだが、この二冊が人に与えうる衝撃を考えると、あまりにも濃密な一ヶ月間だったと言えるだろう。 バザーロフとディーダラスを経て、登場したのはフレデリック・モローという名の青年だった。青年がパリから
先日まとめ買いした童話屋詩文庫は三冊、山之口貘の『桃の花が咲いていた』、岸田衿子の『いそがなくてもいいんだよ』、それからこの本、新川和江の『わたしを束ねないで』だった。前者二人は思潮社の現代詩文庫などには入っていないので、ちょっと「発掘」のような気分で読み進めることができたのだが、この新川和江に対しては、事情がちがっていた。まとまった詩集を読んでみたいと、かねてから考えていた詩人だったこともあり、ページを開くまえから身構えてしまっていたのだ。好きになれなかったらどうしようと、すこしばかり不安でもあった。でも、十秒もかからなかった。本を開いて、そんな不安が杞憂でしかなかったのが証明されるまでには。 わたしを束ねないで 作者: 新川和江 出版社/メーカー: 童話屋 発売日: 1997/10 メディア: 文庫 クリック: 14回 この商品を含むブログ (9件) を見る 新川和江『わたしを束ねない
このごろの更新傾向を見ていただくとすぐにわかるとおり、いま、詩を読むのがとても楽しい。いや、詩はもともと好きなのだが、日本語でよく「現代詩」と呼称される、一見ルールもなにもないように見える言葉たちの自由さに、最近ひたすら驚かされているのだ。詩、というと、ペソアやプレヴェールのような幸福な例外も存在するとはいえ、海外ではどうしても韻律や形式美が追求され、それらを追求しないものは軽く見られがちである。だが、日本語においては、短歌と俳句という超短詩が形式美の部分を引き受けてくれているからか、その短さには合致しないような詩情の迸りに対しても、懐が深い。これは海外の詩が翻訳されているときにも同様に感じられ、たとえばもともとソネットとして書かれたものが、日本語では韻を踏まない十四行詩として、広く受け入れられている。『マチネ・ポエティク詩集』といった試みが示す、そもそもの不可能性が原因になっているかもし
国内にいるあいだに入手した、ブロツキーによるノーベル文学賞受賞講演。荻窪にある馴染みの古本屋さん、ささま書店で購入し、帰りのバスのなか、酔うかもしれないという不安を抱えながら読みはじめ、最後のほうはバスではなく、ブロツキーに酔っていた。こんなに薄い単行本、なかなか目にすることもなさそうなもの(ぜんぶで60ページくらいしかない。しかもその半分は「訳注」と「解説」)。だが、その内容は浅薄とは徹底的に無縁、独立した一冊としてこれを刊行したのは、まちがいなく出版社の英断だった。 私人―ノーベル賞受賞講演 作者: ヨシフブロツキイ,沼野充義 出版社/メーカー: 群像社 発売日: 1996/11 メディア: 単行本 購入: 2人 クリック: 7回 この商品を含むブログ (5件) を見る ヨシフ・ブロツキイ(沼野充義訳)『私人 ノーベル文学賞受賞講演』群像社、1996年。 かつて『ヴェネツィア』を読んで
刊行されていることは知りつつも、手に取ろうか迷っていた一冊。信頼する友人の「このひと、うまくなってるよ」という一言に後押しされて、結局購入した。書店を出てすぐの喫茶店にて二時間ほどで読み終え、その後、日本から中東に戻る飛行機のなかでもう一回、そしていまパラパラと三度目を読み終えた。 きみを嫌いな奴はクズだよ (現代歌人シリーズ12) 作者: 木下龍也 出版社/メーカー: 書肆侃侃房 発売日: 2016/04/29 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 木下龍也『きみを嫌いな奴はクズだよ』書肆侃侃房、2016年。 わたしは短歌のことを好いてはいるが、短歌のほうではわたしのことを好いてくれてはいない気がしている。自分ではまったく作らないし(というか作れない)、どれが良い歌でどれが悪い歌かの判断には、ぜんぜん自信がないのだ。「これこそが秀歌!」なんていう気の利いた断言は
またしてもボルヘス。『伝奇集』と『不死の人』に続いて手にとったのは、1935年刊行の、ボルヘス最初の短篇集だった。かつて『悪党列伝』という邦題で刊行されていた本の文庫版で、旧題のほうが内容を正確に言い表していると思いながらも、この新題が持つ詩情には、ちょっと抗いがたい。その名も、『汚辱の世界史』。 汚辱の世界史 (岩波文庫) 作者: J.L.ボルヘス,中村健二 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2012/04/18 メディア: 文庫 クリック: 3回 この商品を含むブログ (9件) を見る ホルヘ・ルイス・ボルヘス(中村健二訳)『汚辱の世界史』岩波文庫、2012年。 この短篇集に収められている作品は、ボルヘスの純然たる創作というよりは再話であって、そういう意味ではトルストイの『イワンのばか』などに近い性格の本とも言えるだろう。だが、かつて『悪党列伝』という題だったということからも察せ
先日『伝奇集』について書いた折、「記事にできるまで数週間かかるかも……」なんて言っていたボルヘスの対談集。まさか本当にこれほど時間がかかるとは思っていなかったのだが、いまわたしに起こっている空前のボルヘスブームは、じつはこの本が火付け役だったのだ。メルヴィル・ハウスの「Last Interview」シリーズ、ボルヘス編。 Jorge Luis Borges: The Last Interview: and Other Conversations (The Last Interview Series) 作者: Jorge Luis Borges,Kit Maude 出版社/メーカー: Melville House 発売日: 2013/06/25 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る Jorge Luis Borges: The Last Interview, Melvill
最近また、チェスを指すのが楽しい。新しく入社してきたプログラマー男子がチェス好きと判明してからというもの、仕事をほったらかしにして、毎日のように相手をしてもらっているのだ。チェスは対人戦にかぎる。といっても、わたしは言うほど強くないので、三回に一回くらいしか勝てないのだけれど、このくらいのレベルの対局では、先にミスしたほうが負けることになる。だから、相手と対面しているとはいえ、これははっきり自分との闘いなのだが、コンピューター相手では、相手が弱く設定されているとミスばかりするし、強いとなると今度はまったくミスをしなくなるので、なかなかこういう楽しい対局にはならない。とまあ、最近はそんなことばかり考えていたため、自然とこのツヴァイクの短篇を思い出したのだ。ずいぶん前に表題作の「チェスの話」だけ読んだまま、長らく放っていたのを、あらためて最初から読みとおした。 チェスの話――ツヴァイク短篇選
わたしが好んで引用する言葉に、アルベルト・マングェルの理想の読者像がある。「理想の読者は、すべての文学作品を匿名作家のものとして読む」、というのがそれで、じつはこれはインターネットをうろちょろしていたときに、英語でもスペイン語でもなく、フランス語で見かけたものだった。フランスではBabel(バベル、いい名前だ)という出版社がマングェルの翻訳にとても積極的で、もとが英語の作品もスペイン語の作品も訳出されているのだが、このボルヘスの友人の知名度は、日本ではちょっと不遇の感が拭えない。とはいえ、かつてここで紹介したことのある『図書館』以外にも、『読書礼讃』や『奇想の美術館』といった書物が、近年やはり野中邦子氏によって翻訳刊行されているので、遠からぬうちにこれらの訳書も読んでみたいな、と思っている。 さて、そんな出典のわからないままに愛用していた引用句なのだが、今日、書店をふらふらしていた折に、つ
このところ、自分の無知を痛感して、和歌や短歌に関する本ばかり読み漁っているのだが、こと和歌に関して、ようやくこれぞと思える概説書に出会えたように思っている。先日の岩波ジュニア新書『古典和歌入門』の著者、渡部泰明による、和歌の読み方に革命をもたらしてくれる一冊。 和歌とは何か (岩波新書) 作者: 渡部泰明 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2009/07/22 メディア: 新書 購入: 10人 クリック: 51回 この商品を含むブログ (15件) を見る 渡部泰明『和歌とは何か』岩波新書、2009年。 ダジャレのように聞こえるかもしれないが、和歌はわかりにくい。それも、とってもわかりにくい。このわかりにくさの理由は、詠まれている言語が古語である、というだけではない。それならば現代語の散文に訳されたものを読めば、書かれている内容くらいは把握できるはずである。ところが、散文に訳されたもの
すこしあいだが空いてしまったものの、相変わらず短歌に関連した本ばかり読みつづけている。なにも知らない分野なぶん、インプットが非常に多いわりには、得たものをろくに吟味・反芻できていない気がしていて、じつは『現代秀歌』の記事を書いている最中に思いついた、掲載短歌をノートに筆写する、というのを実行していたのだ。いろいろな歌人のたくさんの歌が紹介されている本を読むときには、こうでもしないとどんどん記憶が混乱していってしまう。ノート一ページにつき歌人一人というルールを設けて、出会った瞬間に感じた好き嫌いはいっそ度外視し(いつか魅力がわかるようになるかもしれないので)、『現代秀歌』に掲載されていた百人の歌人の短歌はすべて筆写した。そうすると、『現代秀歌』の場合は歌人一人につきだいたい三首くらいしか紹介されていないので、ノートは下半分以上がまっしろなページが延々と続くことになる。そこで、別のアンソロジー
現代短歌に熱を上げはじめたわたしに、友人が読書ガイドとして薦めてくれた一冊。初めに書いてしまうと、これは人生を変える一冊である。いや、ほんとうに人生を変えられるかどうかは、これを読み終えた読者のその後次第なのだろうが、ここにはもう一生困らないほどの数の歌人たちが紹介されているのだ。同じく岩波新書から刊行されている『近代秀歌』の好評を経て書かれた、永田和宏による現代歌人版百人一首。 現代秀歌 (岩波新書) 作者: 永田和宏 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2014/10/22 メディア: 新書 この商品を含むブログ (7件) を見る 永田和宏『現代秀歌』岩波新書、2014年。 明治から戦前までの歌人を採りあげた『近代秀歌』、じつはわたしはまだ読んでいないのだが、これはその姉妹編にあたる、戦後から1970年までの生まれで、おもに昭和期に活躍した歌人百人が紹介された本である。ちょうどわた
ずいぶん唐突に短歌にはまってしまったことを隠そうともしない本ブログではあるが、じつは現代短歌への関心が高まるにつれて、「現代」と断言するには数十年古い、戦後と呼ばれる時代に生きた歌人たちの短歌、そしてもっと前、明治時代に詠まれた近代短歌、さらにもっともっと遡り、平安朝などの和歌にまで、関心が広がっていっている。今回手に取ったのは和歌に関する本である。それも『源氏物語』の作中に登場する和歌の魅力を、『サラダ記念日』によって現代を代表する歌人となった俵万智が伝える、というもの。 愛する源氏物語 (文春文庫) 作者: 俵万智 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2007/04 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 7回 この商品を含むブログ (11件) を見る 俵万智『愛する源氏物語』文春文庫、2007年。 紫式部の『源氏物語』には、ぜんぶで795首もの和歌が登場するという。よく数える
またしても書肆侃侃房の「新鋭短歌シリーズ」より。短歌に興味を持つようになったばかりのわたしのような読者にとって、これほど手に取りやすい選集はない。解説を含めても200ページに満たない厚さで、1ページあたりの掲載歌数は二首から多くても五首程度。肩肘張らずに開くことができる。現代短歌の魅力・盛り上がりを伝えようとする出版社の意気込みが感じられるすばらしいシリーズで、おかげで短歌がずっと身近なものになった。 タンジブル (新鋭短歌シリーズ2) (新鋭短歌 2) 作者: 鯨井可菜子 出版社/メーカー: 書肆侃侃房 発売日: 2013/05/25 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 鯨井可菜子『タンジブル』書肆侃侃房、2013年。 木下龍也の『つむじ風、ここにあります』、陣崎草子の『春戦争』、それから五島諭の『緑の祠』は、それぞれの記事にも書いたとおり、親しい友人に薦めて
穂村弘が慶應大学でおこなった「世界と〈私〉を考える短歌ワークショップ」の講義録。とても薄いうえに字の大きな本で、出版社はなんと実用書で有名な成美堂出版。それだけでも本の性格が伝わってくるくらいだが、『短歌の友人』などで語られていた穂村弘流の歌論の、手に取りやすいダイジェスト版となっている。 はじめての短歌 作者: 穂村弘 出版社/メーカー: 成美堂出版 発売日: 2014/03 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 穂村弘『はじめての短歌』成美堂出版、2014年。 講義録というのは大抵すばらしく読みやすいものだが、ほむほむが講師とあってはその読みやすさも倍増、ものの一時間ほどで読み終えてしまった。上述のとおり、書かれていることは『短歌の友人』にも語られていたことが多いものの、それらがべつの言葉で、さらにわかりやすく伝えられている。『短歌の友人』を再読しようと思ったまま機会を得ずに
とっくに読み終えていたのにいつまでも感想を書かずにいた、穂村弘の『ダ・ヴィンチ』誌上での連載、『短歌ください』の書籍化第二弾。テーマにもとづく歌の読者投稿をほむほむが選び、コメントを付ける、という、とても幸福な本。 短歌ください そのニ (ダ・ヴィンチブックス) 作者: 穂村弘 出版社/メーカー: KADOKAWA/メディアファクトリー 発売日: 2014/03/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 穂村弘『短歌ください その二』メディアファクトリー、2014年。 この連載シリーズの楽しいところは、掲載されている歌の作者たちがいわゆる歌人ではなく、いまはまだ一般読者だけれど、やがては歌人と呼ばれるようになるであろう人たち、ということ。もちろん、自身の歌集を編む、という、その道のりは、わたしなどには想像もつかないほどに険しいのだろうし、多くのひとたちは出版にこぎつ
まだ一冊あった。以前一読しておいて、そのまま感想を書いていなかった歌集。これの感想を書けずにいたのは、ひとに薦められた本だったからだ。わたしは性格が悪いので、ひとに薦められても、おいそれとすぐにその本を買ったりはしない。このときもそうで、友人が絶賛しているのを聞いてから、こっそりひとり書店の棚に戻って、そして初めて開いてみたのだ。そのときたまたま開いたページに書かれていた歌をいまでも忘れていない。その歌を目にした瞬間、手のなかの一冊を自分の所有物とすべく、レジへと直行したのだった。それはこんな歌だった。 ロシアなら夢の焚き付けにするような小さな椅子を君が壊した(201ページ) 歌集を編むということには十年単位の年月を要するのが当たり前であるのに対して、それを読むということには、ちょっと不敬とさえ思えてくるほどに、時間がかからない。読みはじめて、ああ、すばらしい歌集だった、と本棚にしまうまで
先日の『サラダ記念日』につづき、数年前に一読したまま感想を書いていなかった歌集紹介シリーズ、第二回にしてたぶん最終回(ほかにも何冊か読んでいるはずなのに、なぜか本が見つからないのだ)。穂村弘の短歌、いや、短歌一般を一気に身近なものにしてくれる名著『世界中が夕焼け』の著者による第一歌集。 さよならバグ・チルドレン―山田航歌集 作者: 山田航 出版社/メーカー: ふらんす堂 発売日: 2012/08 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 3回 この商品を含むブログ (3件) を見る 山田航『さよならバグ・チルドレン』ふらんす堂、2012年。 彼の穂村弘との共著、『世界中が夕焼け』の興奮も冷めやらぬころ、刊行されてかなり早い時期に買った記憶があるのに、わたしの手元にあるのは2刷である。ふらんす堂の歌集が、発売されてすぐに2刷というのは、ちょっと目を疑うレベルですごい。穂村弘には新人の発掘
日本で会った心の友に薦めてもらった本。今回は仕事を片付けるための帰国だったため、半年以上ぶりの日本だというのに期間もたった一週間と短く、しかも毎日会議が中心の心底さびしい日程だったのだが、場所もさまざまな取引先の会社を訪問するための電車に揺られる長い時間は、この本を携帯していたおかげでぜんぜん苦ではなくなった。穂村弘が『ダ・ヴィンチ』誌上で連載している読者参加型企画「短歌ください」をまとめたもの、の、文庫版。 短歌ください (角川文庫) 作者: 穂村弘 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2014/06/20 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (4件) を見る 穂村弘『短歌ください』角川文庫、2014年。 はじめに書いてしまうと、この本を読んだせい(おかげ?)で、空前の短歌ブームが自分のなかで起こっている。今日は休日だったので、昼過ぎに起きてから短歌の本ばかり十冊も鞄に詰
親しい友人の強い薦めで手に取った本。その友人に薦められると、どんな本でも躊躇なく手に取ってしまうから不思議だ。 BとIとRとD 作者: 酒井駒子 出版社/メーカー: 白泉社 発売日: 2009/06 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 23回 この商品を含むブログ (31件) を見る 酒井駒子『BとIとRとD』白泉社、2009年。 よい意味で、とても狂った絵本である。一般的に絵本に求められるような要素が、ここにはなにひとつない。いわゆる「大人のための絵本」というのともちがう。酒井駒子のすばらしい絵はともかくとして、この本に書かれていることを楽しいと思うのは、童心を捨てておらず、言葉の持つ詩情に敏感なひとだけだと思う。『ふふふん へへへん ぽん!』を思い出す。薦められた際、「あなた、この本ぜったい好きだよ」と言われたことを思い出して、いま誇らしくなっている。 「カラカラと小さな乳母
吉祥寺の古本屋「百年」でとうとう手に入れた、欲しい本リスト最上段の主、ミッシェル・カルージュ。8400円という値段で購入したが、ネットの相場が20000円を容易く越えることを考えると、決して高くはない。むしろ安い。 独身者の機械 未来のイヴ、さえも・・・・・・ 作者: ミッシェル・カルージュ,高山宏,森永徹 出版社/メーカー: ありな書房 発売日: 1991 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ミッシェル・カルージュ(高山宏・森永徹共訳)『独身者の機械 未来のイヴ、さえも……』ありな書房、1991年。 この本を求めて『東京ブックナビ』を片手に、町田や早稲田や千駄木や本郷や渋谷や中野や高円寺や阿佐ヶ谷や荻窪や三鷹や神保町をウロウロしたことが思い出される。結局最寄り駅の一つである吉祥寺で見つかったのが可笑しいが、ともかく、ようやくこの幻の本を手に入れたのだ。 マルセル・デュシャンや
このところ英語の本ばかり読んでいる気がするが、じつはそれらと並行して、日本語で書かれた一冊の本をかなり長いあいだ鞄に潜ませていた。仕事を早く切り上げられた日に、喫茶店へ直行して読むための本であり、短篇一篇あたりがだいたい、ちびちびと飲むコーヒー一杯分の時間で読み終えることができる(読み終えるころにはコーヒーは冷めているが)。それがあんまり楽しかったので、翻訳者違いの再読だというのに、初めて読むような興奮とともに最後のほうは心底惜しみつつ読み終えた。世界が求めていたコラボレーション、南條竹則訳の「ブラウン神父」。 ブラウン神父の無心 (ちくま文庫) 作者: G.K.チェスタトン,G.K. Chesterton,南條竹則,坂本あおい 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2012/12 メディア: 文庫 クリック: 7回 この商品を含むブログ (14件) を見る G・K・チェスタトン(南條竹
大好評(?)のうちに幕を開けた「3冊で広げる世界」シリーズ、ずっと更新していなかったのはネタが尽きたからではなく、旧ブログからの記事の移転や、新しく記事にしたい本が多すぎて、書く時間をぜんぜん持てていないからである。これはまとめてみたいな、という「3冊」が頭のなかにはすでにたくさんあるのだけれど、とっくに機を逸してしまっているそれらはひとまずうっちゃっておき、いまさっき新しく思いついた取り合わせについて書いておきたい。 ここではもう何度も繰り返していることであるが、文学というのは、細部こそがすべてである。これはもう、ひとつの意見として述べているつもりもなく、断定としてとらえてもらっていい。あらすじだけで満足できるのであれば、だれもわざわざシェイクスピアを手に取りはしないのだ。あらすじというのはわたしが言うところの「細部」を根こそぎ削りとった、端的に言って死骸であり、そこにはもともとの作品が
先日記事にした『Charlotte's Web』に引き続き、E・B・ホワイトのもうひとつの代表作。映画化もされて一時期話題になったものの、まだまだ日本ではあまり知られていない、とはいえ英語圏では知らないひとなどいない、という類の児童文学。 Stuart Little 60th Anniversary Edition (full color) 作者: E. B. White,Garth Williams,Rosemary Wells 出版社/メーカー: HarperCollins 発売日: 2001/10/02 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る E. B. White, Stuart Little, HarperCollins, 2001. やはり邦訳もあり、先日の『シャーロットのおくりもの』同様、さくまゆみこ氏の訳業である。訳題は『スチュアートの大ぼうけん』。このさく
年末に公開した「雑記:海外文学おすすめ作家ベスト100」が好評を博したようで、とても喜んでいる。評価し、広めてくれた方々、ありがとうございました。あけましておめでとうございます。年始早々、「おれって人気者じゃん!」なんて馬鹿げた考えに取り憑かれました。とはいえ、あんなまぐれ当たりのホームランは滅多に出るものではないので、さっさと忘れることにし、今年もいつものように長々と駄文を書き連ねる所存である。というわけで、昨年末から気に入っているイギリスの詩人Roger McGoughの、わたしにとっては『It Never Rains』と『Slapstick』に次ぐ三冊目の詩集。 Imaginary Menagerie 作者: Roger McGough 出版社/メーカー: Frances Lincoln 発売日: 2011/05/01 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る Roge
2011年を最後に更新していなかった、いわゆる「好きな作家ベスト100」を掲載する。公開した途端に後悔する、という、あれである。名前が「好きな作家ベスト100」でなくなったのは、「好きな」というのと「ベスト」というのが、同じことを意味していることに気づいたからだ(遅い)。「おすすめ」と銘打ってはいるものの、玄人ぶるつもりはないが、だれが読んでもおもしろいというような作家ばかりではない。また、例年どおり、順位はそのときの気分次第なので、あまり深く考えないでいただきたい。1位から20位くらいまでは全員1位、20位から50位くらいまでは全員2位、50位以下は全員3位という感覚だ。 以前は1位から順に発表という、緊張感もなにもないリストだったのだが、今回はこの「はてなブログ」に引っ越してからの初めての公開ということで、「見出し」機能を大いに駆使し、緊張感抜群の形式を実現した(※個人の感想です)。5
いまから五年くらい前のこと。ぞっこん惚れこんでいるのに、なにひとつ感想めいたことを書けない、という奇妙な作家と出会った。リチャード・ブローティガンである。『アメリカの鱒釣り』、『芝生の復讐』、『愛のゆくえ』などを読んで、もうとんでもなく好きになってしまったのだが、一冊、いや、一篇あたりの、「気に入る文章含有率」が高すぎて、もうなにも書く気にはなれなかったのだ。このままじゃあいかん、と思っていたとき、こんな詩集があったことを思い出した。薄い詩集なら、相対的に引用したい文章も減るにちがいない。これなら書けるかも、と、初めて思えた。 東京日記―リチャード・ブローティガン詩集 作者: リチャードブローティガン,Richard Brautigan,福間健二 出版社/メーカー: 思潮社 発売日: 1992/08 メディア: 単行本 クリック: 6回 この商品を含むブログ (18件) を見る リチャード
昔からよく言われてきたことだが、わたしは本を読むスピードが速いらしい。そういうことを言ってくる人たちは大抵、それを羨んでいるような調子で語りかけてくるので、この場ではっきりと言っておきたい。わたしの本を読むスピードは、べつに速くない。ただ、ほかの人たちよりも読書に費やしている時間が長いのだ。一日のうち本に向きあっていられる時間を、できるかぎり長くするように工夫している、と言ってもいい。 わたしは昔から、現代社会で本を読むには、以下の3つの敵に注意しなければならないと思ってきた。すなわち携帯電話、テレビ、それからインターネットである。 まず、携帯電話はできるだけ持たないほうがいい。仕事の必要などからどうしても持たなければならないのなら、電話以外の機能が付いていないものを選ぶべきだ。メールもいらない。一日に届くメールの9割は迷惑メールである。スマートフォンをどこにいても目にするが、携帯電話を持
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