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希死念慮(きしねんりょ:Suicidal Ideation)は、うつ病をはじめ多くの精神疾患で認めうる症状の1つです。そして数々の精神症状の中でも、もっとも見逃してはいけない症状の1つでもあります。 うつ病をはじめとした精神疾患は治療に時間がかかる事があります。そしてその経過中でもっとも生じさせてはいけないのが、患者さんが自ら命を断ってしまう事です。 自ら命を断ってしまうという最悪の事態を防ぐためには、患者さんに希死念慮が生じていないかを見逃さない事が大切です。また患者さん自身も希死念慮を自分の中に溜め込まず、信頼できる人に打ち明けられる環境も重要です。 希死念慮を早期に発見し、増悪しないように適切に治療する事で、その人の大切な将来を守る事が出来るのです。 ここでは希死念慮が生じる背景と、希死念慮に対して本人や周囲の方々が取るべき適切な対応法などについて考えていきましょう。 1.希死念慮と
インチュニブ錠(一般名:グアンファシン塩酸塩徐放錠)は2017年より販売されているADHD(注意欠陥多動性障害)の治療薬です。 ADHDは神経発達障害に属する障害であり、 不注意(ミスが多い) 多動性(落ち着きがない) 衝動性(我慢できない) といった症状を認めます。これにより生活に様々な支障が生じてしまい、大きな苦しみが生じます。 インチュニブはADHDのこれらの症状を改善させる効果があります。 インチュニブは従来使用されていたADHDの治療薬と異なる作用機序を持つため、今までのADHD治療薬では十分な効果が得られなかったという方にも効く可能性があります。また代表的なADHD治療薬である「中枢神経刺激薬」で問題となる耐性・依存性・乱用といった副作用も生じないため、安全性にも優れます。 インチュニブはどのような特徴を持ったお薬で、どのような人に向いているのでしょうか。 ここではインチュニブ
最近はあまり聞かなくなりましたが、昔の精神医学には「精神病(せいしんびょう)」という概念がありました。 古い概念であるため、医学の発展とともにほとんど使われなくなりましたが、現在でも一部の診断基準には「精神病」という概念が残っており、 「精神病性の特徴を伴ううつ病」 「気分に一致する精神病性の特徴を伴う双極性障害」 などのように使われています。 「精神病」というと「精神科の病気の総称(=精神疾患)」だと誤解されがちですが、実は「精神病」と「精神疾患」というのは正確には異なる概念になります。 ではこの「精神病」というのは、どのような状態なのでしょうか。そして「精神疾患」とはどのように異なるのでしょうか。 「精神病」という概念はどのような意味があって作られ、なぜ現在では使われなくなってきたのでしょうか。 ここでは「精神病」という概念について詳しく説明させていただきます。 1.精神病とは 精神病
診察室で患者さんとお話をしていると、 「つい考えすぎてしまい、自分で自分を苦しめてしまう」 「考えすぎたら良くないと分かっているけど、つい考え込んでしまう」 といった悩みを相談される事があります。 何かを実行に移す前に、十分に考えるという事は非常に大切です。安易な行動は取り返しのつかない危険や失敗につながる事もあるからです。 しかし、考えば考えるほど良いのかというとそうとも言えません。考え込み過ぎてしまうと、失敗を恐れるあまり行動できなくなってしまったり、不安や恐怖を必要以上に強く意識してしまう事にもなります。 「よく考えて行動する慎重な性格」は悪い性格ではありません。しかし、考え過ぎてしまうために自分自身を苦しめているのであれば、気持ちを楽にするために考えすぎる性格を多少修正してみてもよいかもしれません。 ここでは考えすぎてしまう事で苦しさを感じている方に向けて、考えすぎる性格をどのよう
お薬には副作用はつきものです。これは精神科のお薬に限らずあらゆるお薬に言える事です。 精神科のお薬の中でも抗精神病薬(主に統合失調症の治療薬)は、服用が長期間に渡る事が多く、特に副作用には注意を払わなくてはいけません。 近年では比較的安全性の高い新しい抗精神病薬(第2世代抗精神病薬)が広く用いられるようになり、古い抗精神病薬(第1世代抗精神病薬)を使っていた頃と比べると副作用の頻度は少なくなりました。しかし、副作用がなくなったわけではありません。 抗精神病薬で生じる副作用の1つに「ジストニア(筋緊張異常症)」というものがあります。 ジストニアは錐体外路症状(EPS)という神経症状の1つであり、筋肉がかたまってしまったり、けいれんしてしまうことで患者さんの生活に大きな支障を与えてしまう副作用です。 このジストニアはなぜ生じるのでしょうか。また対処法・治療法などはあるのでしょうか。 今日は抗精
考え事には、考える事で何らかの進展が得られる考え事と、考えても何も得られない考え事があります。 前者は考える意味があり、一生懸命考える必要があります。しかし後者は考えても答えが出ないばかりか不安や落ち込みがどんどん強まってしまうため、考えすぎる事はむしろ害となってしまいます。となると、考え事というのは考える意味のあることのみに限って行うのが理想的だと言えます。 しかし考えるという行為は難しいもので、私たちは考えても仕方がない事ほど、考えを止められず延々と考えてしまいがちです。 このような考え事は、解決法が自分では分からないものであったり、すぐには解決できないものであるため、考える事自体がストレスとなります。そのため、この考え事をしても得られるものは少なく、考えれば考えるほど心はどんどん傷ついていく悪循環に陥っていくことになります。 このような場合、考えを止める方法というのはあるのでしょうか
ベルソムラ錠(一般名:スボレキサント)は2014年に発売された睡眠薬です。今までの睡眠薬と異なり、まったく新しい機序の睡眠薬であるため注目されているお薬です。 発売されてまだ歴史は浅いですが、現状での印象としては効果も良く、副作用も少ない優秀な睡眠薬であると感じます。恐らく、処方数も順調に増えているのではないでしょうか。 ベルソムラは今後の不眠治療の主役を担う可能性のあるお薬でしょう。 ここではベルソムラの効果や作用機序、作用時間、他の睡眠薬との比較などを紹介していきます。 1.ベルソムラの特徴 まずはベルソムラの特徴をお話します。 ベルソムラの特徴として、 効果がしっかりしていること 副作用が少なく、特に耐性・依存性などがほとんどないこと 入眠障害(寝付けない)、中途覚醒(夜中に起きてしまう)の両方に効果があること 今までにない、新しい作用機序の睡眠薬であること が挙げられます。 耐性・
醜形恐怖症(身体醜形障害)は、自分の容姿に対して偏ったこだわりが生じてしまい、一般的に見れば全く問題のない容姿であるにも関わらず「自分は醜い」と感じてしまう疾患です。 醜形恐怖症では、ただ「自分が醜い」と感じるだけではありません。それにより精神的に大きな苦痛が生じ、また日常生活にも支障を来たすようになります。 醜形恐怖症の症状は、一般的な感覚からすると「何でそう感じるのか分からない」と理解に苦しむかもしれません。全く問題のないような容姿の方が「私は醜いんです」と真剣に悩んでいるからです。 しかし多くの場合、醜形恐怖症が生じる根本を探っていくと、発症してしまうような確かな原因があります。 今日は醜形恐怖症がなぜ発症してしまうのか、その原因についてお話させて頂きます。 1.なぜ自分を「醜い」と感じるのか 醜形恐怖症は客観的に見れば問題のない容姿の方が、「自分は醜い」と悩み苦しむ疾患です。「身体
適応障害(Adjustment Disorder)は、こころの病気(精神疾患)の1つです。こころの病気の中でも頻度がとても多い疾患で、有病率は5~20%とも報告されています。 適応障害はその名の通り「適応できない事で発症する疾患」なのですが、その疾患概念が少し分かりにくいところがあります。そのため「適応する努力をしないで病気だというのはおかしい」「そんなのは甘えではないか」と誤解や偏見を受けやすい傾向にあります。 適応障害の患者さんは非常に多くいらっしゃいます。適応障害について誤解が生じている現状は、多くの適応障害の患者さんを不当に扱っているという事で、これは患者さんをより苦しめ、社会的にも大きな損失となります。 ここでは適応障害という疾患について、その概念や原因、症状、診断方法や治療法などすべての情報を紹介していきます。 このページを読めば適応障害のすべてを理解できるように作りました。こ
統合失調症は、100人に1人(1%)の割合で発症すると報告されており、決して稀な疾患ではありません。 統合失調症では様々な症状が出現する可能性がありますが、代表的な症状としては「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」の3つが挙げられます。 陽性症状は幻覚・妄想といった「本来ないものがあるように感じる症状」で、陰性症状は無為自閉・感情平板化・無気力といった「本来あるべき能力がなくなってしまう症状」です。これらは比較的理解しやすい症状だと言えます。 しかし認知機能障害というのは、具体的にどんな症状なのか分かりにくいのではないでしょうか。 認知機能障害は統合失調症において無視できない重要な症状であり、認知機能障害を出来る限り改善させることが患者さんの社会復帰・生活能力向上につながります。 今日は統合失調症の認知機能障害についてみてみましょう。 1.認知機能障害とは何か? 統合失調症では様々な症状
不眠で悩まれている方は非常に多く、不眠を自覚している人は日本人の約10~20%もいるという報告もあります。 睡眠は心身の疲れを取るためには欠かせないものです。睡眠が不十分だと心身の疲れが十分に取れず、生活に様々な支障をもたらすようになります。 眠気や集中力低下をきたし、交通事故や仕事の重大なミスにつながる事もありえます。また不眠が続くと生活習慣病などをはじめとした身体疾患にかかるリスクも上がりますし、精神的にも不安定になりやすく、うつ病発症などのリスクも上げる事が知られています。 不眠にはいくつかのタイプがありますが、その中の1つに「早朝覚醒」があります。早朝覚醒とは、本来目覚めたい時間よりも早くに目覚めてしまい、その後に再び眠りにつく事が出来ないというタイプの不眠です。 「眠れない」という悩みを解決するには、まず自分の不眠症がどのようなものなのかを見極め、原因に応じた対策を取っていくこと
自閉症スペクトラム障害(自閉症、発達障害、アスペルガー症候群など)は、治療が長期に渡ることの多い疾患です。 その理由として、これらの疾患は根本を治す治療法というのが存在せず、環境調整や生活への工夫で治療をしていくことが一般的だからです。このような治療法は患者さん自身も努力を続けなければ効果が得られにくいため、どうしても治療に時間がかかってしまうのです。 お薬が用いられることもありますが、自閉症スペクトラム障害に用いられるお薬というのは鎮静をかけることでイライラやかんしゃくを抑える目的で用いられる抗精神病薬であり、あくまでも対症療法的(その場の症状を抑えるだけ)で疾患の中核的な症状を改善させるようなものではありません。 しかし近年、「自閉症にオキシトシンが効くのではないか」という報告がされ、自閉症スペクトラム障害の中核的な症状をお薬によって改善させることができるのではないかと大きな注目を集め
ストレスを抱え込み過ぎてこころの病気を発症してしまった方々の診察をさせて頂くと、いつも感じる事があります。 それは「皆さん、極限まで一人で我慢しすぎです!」という事です。 つらい事や苦しい事があっても、皆さんなかなか周囲に助けを求めません。「自分で何とかしよう」「人に迷惑をかけちゃいけない」と極限まで自分一人で抱え込み、耐えて耐えて、いよいよどうにもならなくなってしまって精神科や心療内科に連れてこられた、という方が多いのです。 「ちょっときつくなってきたな」 「なんか少し調子が悪いな」 このような状態の時に「誰か手伝って」「助けて」「相談に乗って」と周囲に言う事が出来ればこんなに苦しまなくても済んだのに、と感じずにはいられません。 我慢する事や耐える事は悪い事ではありません。「人に迷惑をかけないように」「自分で責任持ってやらないと」という相手への配慮や責任感は素晴らしいものです。 しかし1
「不安」というものは、とてもやっかいな感情です。 不安に襲われ、それにとらわれてしまうと、居ても立ってもいれらなくなります。こころがモヤモヤして落ち着かず、不快な感覚が続き、全身から汗がでて、動悸がして、呼吸も荒くなります。心身にこのような症状が現れることで、より不安が強くなっていきます。 不安は不安を呼びます。不安はどんどんと大きくなっていき、冷静な判断がどんどんできなくなっていきます。一度この悪循環に入ってしまうと、そこから抜け出すのは容易ではありません。 みなさんもこのような悪循環に陥ってしまった経験があるのではないでしょうか。 しかし、実はこの悪循環はちょっとした工夫で断ち切る事ができます。不安を自分でコントロールするための術を身に付ければいいのです。 これは順を追って習得すれば、誰でも身に付ける事が可能です。 ここでは不安にとらわれそうな時、不安を解消するために役立つ考え方を紹介
「もう仕事を辞めたいです」 「仕事をこれ以上続けられる自信がありません」 精神科を訪れる患者さんからこのような言葉が発される事は珍しい事ではありません。「仕事」は、こころが疲弊してしまう原因として大きな割合を占めています。 最近では職場のストレスチェックが義務化されたことにより、ストレスチェックに引っかかった方が精神科に訪れることも増えてきました。ここでも「もう仕事を辞めたい」という悩みを打ち明けられることが多くあります。 ある程度のストレスは、仕事である以上は仕方のない事でしょう。しかしいくら仕事といえど、あまりに強いストレスを受け続けてしまうようであればこれは問題です。自分の限界以上のストレスを受け続けているのであれば、「もう無理だ」「仕事を辞めるしかない」という気持ちになってしまうのも当然でしょう。 どうしても仕事のストレスに耐えられない時は、確かに辞めるのも1つの方法ではあります。
世の中には様々な性格の人がいます。 性格に優劣はなく、どのような性格の方もそれぞれに一長一短があり、良い面もあれば良くない面もあります。「この性格の人は優れている」「この性格の人は劣っている」と一概に言えるものではありません。 しかし性格のかたよりが極端すぎる場合、本人が苦しむ事になったり周囲とトラブルになってしまいやすくなるという事は多いようです。 精神科領域で言うと、患者さんから良く相談される性格に「心配性」があります。 「心配性ってどうすれば治りますか」 「心配性な自分が嫌いなんです」 このように、みなさん心配性を悪い性格だと考えているようです。 しかし心配性という性格も他の性格と同じで、良くない面も確かにありますが良い面だってあります。 心配性で悩んでいる方は「心配性である自分をすべて変えたい」と考えてしまう傾向がありますが、心配性の全てを否定してはいけません。自分の心配性にはどん
ロヒプノール錠(一般名:フルニトラゼパム)は1984年に発売された睡眠薬で、ベンゾジアゼピン系という種類に属します。 ベンゾジアゼピン系は効果も良く、重篤な副作用も少ないため、現在でも不眠治療でよく使われるおくすりです。 ここではロヒプノールの効果の強さや作用機序、作用時間、他の睡眠薬との比較などを紹介していきます。 ちなみにロヒプノールは中外製薬が販売している睡眠薬ですが、エーザイ社が販売している「サイレース」と主成分が全く同じおくすりです。 1.ロヒプノールはどんな睡眠薬か まずはロヒプノールの全体的な特徴をお話します。 ロヒプノールの最大の特徴は、その効果(催眠作用)の強さにあります。 ベンゾジアゼピン系睡眠薬の中では最強という声も多く、眠らせる力には定評があります。 また作用時間のバランスが非常に良く、使いやすいおくすりでもあります。 具体的には服薬後約1時間で血中濃度が最大になり
どうしても許せない事って誰にでもあると思います。 「心を許せる親友だと思っていたのに傷つくことをされた」 「信頼していた親に絶対に言って欲しくなかった事を言われた」 理由は様々ですが、「あの事だけは絶対に許せない!」と感じることがあります。 このような許せない気持ちは怒りや虚しさ・絶望といった感情を生み、こころを疲弊させてしまいます。実際に許せない出来事によってこころが疲弊してしまい、精神科を訪れる方も少なくありません。そしてそのような方をみていると、みなさん「許せない気持ち」のせいでとても苦しそうです。 どんな事でもすぐに許しなさいなどと言うつもりはありません。簡単に許すべきでないものも世の中にはたくさんあります。 しかしいつまでも「許せない」という気持ちを持っていると、精神衛生上あまり良くないものまた確かです。「許す心」をなるべく持つようにしていた方が、メンタルヘルス上は好ましいと言え
一口に抗うつ剤と言っても、たくさんの種類があります。どの抗うつ剤を使うかは主治医が考えてくれますが、どのような種類があって、どうやって選んでいるのかは実際に服用している当事者としては気になるところでしょう。 抗うつ剤の使い方には、厳密な決まりがあるわけではありません。症状は患者さんそれぞれで違うため、使う抗うつ剤も個々の患者さんの状態に合わせて臨機応変に考えていきます。うつ病治療のガイドラインや主治医の経験、医学知識などの様々な情報をもとに選択する抗うつ剤は決定されるのです。 今日は抗うつ剤の強さや副作用の比較、どのように使い分けているのかなどについてお話していきます。 1.抗うつ剤の種類一覧 まずは抗うつ剤にはどんな種類があるのか見てみましょう。古いものから順に紹介していきます。 Ⅰ.三環系抗うつ剤(TCA) 【特徴】 効果は強力だが、副作用も多い 三環系抗うつ剤は、一番歴史の古い抗うつ
不安が異常に高まってしまい、生活に様々な支障をきたすようになる状態は不安障害と呼ばれます。 以前は「神経症」「不安神経症」などと呼ばれていました。また最近では「障害」という用語が患者さんへの誤解・偏見につながるという配慮から「不安症」と呼ばれることもあります。 不安障害は非常に広い疾患を含んでおり、その位置づけを正しく理解できていない方も少なくありません。例えば「ある病院では不安障害と言われて、別の病院ではパニック障害と言われました。私は一体どちらの疾患なのですか?」という質問をいただくこともあります。 では不安障害とはどのような疾患なのでしょうか。 ここでは不安障害について詳しく説明させていただきます。 1.不安障害とはどのような疾患なのか 精神科で診察を受けると、医師から「不安障害です」と診断される事があります。 この不安障害ってどのような疾患なのでしょうか。 不安障害というのは、過剰
循環器科領域では、「タイプA」と呼ばれる性格傾向を持つ人は、心筋梗塞や突然死のリスクが高いということが知られています。 また、がん治療領域では「タイプC」と呼ばれる性格傾向を持つ方は、がんにかかりやすい事が指摘されています。 精神疾患は、「このような性格を持っている人は〇〇病にかかりやすい」といった疾患と性格の関連性があるものが多いです。しかし、身体疾患においてもこのように疾患と性格に関連が指摘されているものがあります。 なぜ「性格」という内面の違いによって身体の病気の発症のしやすさが異なってくるのでしょうか。また、これらの性格はメンタルヘルス的にみるとどうなのでしょうか。 性格は簡単に変えられるものではありません。しかし自分の性格傾向を見直し、「自分の性格はこういったリスクがあるんだな」と理解していることは大切です。リスクを理解できていれば、自分の性格の問題点を見直し、日常において少しず
レジリエンス(Resilience)とは、精神的な回復力・防御力という意味として、近年メンタルヘルス領域で注目されている言葉です。 ストレスを受けた時に、落ち込みやすい(防御力が低い)、なかなか立ち直れない(回復力が低い)という方は、「レジリエンスが低い」という事ができます。このような方は、レジリエンスを高めれば精神的なストレスを受けた時にこころにダメージを受けにくくなり、精神疾患にもかかりにくくなります。また精神疾患にかかってしまっても、早く病気を治すことができます。 以前は、レジリエンスは生まれつきの能力であり高めることは出来ないと考えられていました。しかし現在では、適切なトレーニングを受ければレジリエンスは誰でも高める事が出来る事が分かっています。 レジリエンスを高めるために大切なポイントについて紹介します。 1.レジリエンスは高めることが出来るのか 以前は、レジリエンスはトレーニン
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)は、現在のうつ病治療には欠かせない抗うつ剤のひとつです。 現在のうつ病治療は「新規抗うつ剤」と呼ばれる比較的新しい抗うつ剤が用いられています。新規抗うつ剤は有効性がしっかりとある割に副作用が少なく、安全に治療を行えるというメリットがあります。 SNRIも新規抗うつ剤に属するお薬であり、うつ病治療に多く用いられている抗うつ剤の1つです。 日本では1990年代からSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)が発売され、SNRIはやや遅れて2000年頃から発売が開始されました。そのため日本ではまだSSRIが多く用いられていますが、海外に目を向けるとSSRIと同じくらいSNRIは用いられています。 SSRIは「セロトニン」という物質を増やす事でうつ病を改善させますが、SNRIは「セロトニン」のみならず「ノルアドレナリン」も増やす作用があります。これ
日本人の約10~20%が不眠を自覚しているという報告もあり、「眠れない・・・」という悩みを持っている方はとても多くいらっしゃいます。 十分な睡眠がとれないと、様々な支障が生じます。眠気や集中力低下をよって交通事故や仕事の重大なミスを引き起こす事もあります。また不眠が続くと生活習慣病などをはじめとした身体疾患にかかるリスクも上がります。精神的にも不安定になりやすくなり、うつ病のリスクも上がる事が知られています。 一口に不眠と言っても、その症状はいくつかに分けられます。そしてどのような不眠の症状があるのかによって原因や改善策・治療法が異なります。「眠れない」という悩みを解決するには、まず自分の不眠症がどのようなものなのかを見極め、原因に応じた対策を取っていくことが大切です。 今日は不眠症の中でも「中途覚醒」という症状に焦点を当て、その原因や治療法などを紹介していきます。 1.中途覚醒とは 中途
失敗が重なったり、周囲に迷惑をかけてしまった時、「こんな自分なんてもう嫌だ」と自己嫌悪に陥ってしまう事があります。 何かを失敗した時、失敗した原因が自分にあるのであればそれを反省して将来に生かしていく事は非常に意義のある行為です。しかし、ただ自己嫌悪に陥るだけであれば、そこから得られるものは何もありません。 自己嫌悪に陥ると、自分の全てがダメなように感じてしまいます。失敗したのは自分の中の一部が原因であっただけなのに、「こんな自分なんて生きている価値がない」「自分は全てがダメで、良いところなんて一つもない」と考えてしまう事もあります。 ただ失敗した事のみを真摯に反省して、次に同じ失敗をしないように工夫をすればいいだけなのに、自己嫌悪はそれすらせずにただ自分を傷付けるだけの行為なのです。 反省と自己嫌悪は全く異なるものであり、反省は意味のある行為ですが自己嫌悪は害しかない行為になります。 今
日々精力的に活動していた人が、突然「燃え尽きた」かのように無気力になってしまう事があります。 まるでガソリンが無くなったかのように動けなくなるこの現象は、「バーンアウト(Burn-Out)」と呼ばれます。 バーンアウトはあらゆる人に生じうる現象であり、誰にとっても他人事ではありません。 「バーンアウト」という用語は病名ではありませんので、燃え尽きた状態で精神科を受診しても「バーンアウトです」と診断されることはありません。症状や経過に応じて、「適応障害」「うつ病」といった診断名になるでしょう。しかしどのような病名がついたとしても、その根底にバーンアウトがある場合は通常の治療法に加えてバーンアウトに対するケアも行う必要があります。 ここではバーンアウトという状態について詳しくお話ししていきます。 1.バーンアウトとはどのような状態か バーンアウト(Burn-Out)とは、どのような状態を指すの
何かを精力的に一生懸命頑張っていた人が、ある日「燃え尽きる」ようにやる気がなくなり、動けなくなってしまう。このような状態を「燃え尽き症候群(バーンアウトシンドローム)」と呼びます。 燃え尽き症候群は精神疾患として明確に定義されているものではなく、治療法なども確立されたものはありません。 しかし燃え尽き症候群に該当するような方は少なくないため、その治療法を間違えないように気を付けなければいけません。燃え尽き症候群の症状を表面的にだけ把握し、うつ病として薬物療法だけを行ってしまうようなケースもありますが、これでは治療が上手くいくはずもありません。 燃え尽き症候群は、燃え尽きてしまった経過が一番重要であり、そこにアプローチをしない事には根本の解決ははかれないからです。 今日は燃え尽き症候群の克服法・治療法などについて紹介します。 1.燃え尽き症候群のジレンマを理解する 燃え尽き症候群の治療をする
こころの健康を保つためには、定期的に休みを取らなくてはいけません。 どんなにタフに見える人でも、エネルギーが無限にある人などいません。定期的にお休みを取らないと心身は壊れてしまいます。休日に心身をゆっくり休めてエネルギーを充電することで、また元気に活動できるようになるのです。 このような理由から一般的な企業・学校では週に1~2日程度の休日が設けられています。 しかし、みなさんはこの休日を使ってしっかりと心身を休める事が出来ているでしょうか。 みなさん「身体を休める事」はまずまず出来ていますが、「こころを休める事」に関しては十分に出来ていない方が多いと感じます。 こころの休ませ方は人によって多少の違いがあり、ただ休めば良いというものではありません。また「自分が満足できるような過ごし方」をしたかというのも大切で、例えば一日中家でゴロゴロして終わってしまえば、「一日を無駄に過ごしてしまった・・・
こころの病気の多くはストレスが一因となるため、 「メンタルが弱い自分を変えたい」 「ストレス耐性を高めたい」 診察時にこのような相談を頂く事があります。 メンタルは弱いよりも強いに越したことはありません。ストレス耐性が低いよりも高いに越したことはありません。メンタルを強くする工夫やストレス耐性を高める工夫はぜひ多くの方に実践して頂きたい事なのですが、どうすればそれが達成できるのかが分からない方は多いようです。 中にはメンタルの強さやストレス耐性は生まれつきのものだと諦めてしまっている方もいらっしゃいます。 しかし「メンタル」や「ストレス耐性」の意味を正しく理解し、それを高めるにはどうすればいいのかを考えていく事で、これらの能力は誰でも高める事が出来ます。 今日はメンタルを強くする方法・ストレス耐性を高める方法について考えてみたいと思います。 1.メンタルが弱いというのはどういう事なのか 「
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