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大谷翔平
www.hyj-susume.com
2.オリエンタリズムにみる自己-他者の境界 2-1.境界を生きる この連載の最初に人類学的視点として挙げた、レヴィ=ストロース*1の「真正性の水準」に戻ってきました。「真正性の水準」という2つの社会の様態の区別は、他の人びととの対面的なコミュニケーションによる小規模な「真正な社会」と、近代社会を典型とする、より後になって出現した、文字や法や貨幣といったメディアに媒介された間接的なコミュニケーションによる大規模な「非真正な社会」の区別でした。レヴィ=ストロースは、「まがいもの(非真正なもの)」だからなくすべきと言っているわけではもちろんなく、その2つの社会でのコミュニケーションの仕方や経験のあり方が異なっているから、それを混同してはいけないといったのでした。そして、重要なことに、「真正な社会」は、近代社会や都市で失われたわけではなく、大都市でも人類学者がフィールドワークをできるのは、非真正な
3.贈与・分配 では、前回の鈴木さんのブリコラージュ生活に引き続き、彼の周りの社会における「贈与・分配」というやり取りを見ていきましょう。ここで「贈与・分配」という言い方をしていますが、厳密に学術用語として使うとするなら、贈与と分配とは異なったもののやり取りになります。ただ、ここでは、贈与はいつか返さなければならないもの、分配はその場のみんなで分かちあうこと、ぐらいに理解しておくので十分です。鈴木さんの周りには、贈与や分配があふれています。 「そうして試していると、テレビでもラジオでもステレオでも全部このバッテリーで使えるじゃないの。びっくりしたよ」 それはびっくりです。たぶん、ほとんどの人が知らないでしょう。そして「隅田川のエジソン」はそれの特許を取ることなんか考えず(まあ、特許は取れないでしょうが)、電気文明を無償で広めるのである。 「そのころ、本当にたくさんのバッテリーやらバイクやら
2.ブリコラージュについて では早速、坂口恭平さんの『TOKYO0円ハウス0円生活』*1を読んでみましょう。 坂口さんは建築を専攻している学生のとき、卒業論文としてホームレスの家(これが矛盾した言い方になっていることに注意!)を「建築家なしの建築」の例として取り上げ、それを『0円ハウス』という本にしました。『TOKYO0円ハウス0円生活』は、隅田川沿いに「0円ハウス」を建てて生活している鈴木さんというユニークな人(坂口さんは鈴木さんを主人公にした『隅田川のエジソン』[幻冬舎文庫]という小説まで書いています)の家におじゃまして、いわばフィールドワークをして、その生活ぶりを書いた民族誌のような本です。民族誌とは人類学者がフィールドワークによって他者の生活と文化を描いたもので、その意味で、この本は文化人類学に近い本といえるかもしれません。それでは、読み解きながら文化人類学的な視点や思考、独特の問
この連載は、現代社会を少しでも楽しく生きていくために役に立つ文化人類学のもつ独特の「視点」や「考えかた」をわかりやすく示し、皆さんに身につけてもらうことを目的としています。そのために、現代のさまざまな問題に触れた、一般向けの本(新書や文庫になっているものに限定しました)を人類学的に読み解いていくことによって、人類学的視点とはどういうものかを示していこうというやり方を採ってみようと思います。 取り上げる本はいずれも人類学者が書いたものではありません。目的が、文化人類学の専門的知識を習得するというよりも、文化人類学的な視点を身につけることにあるからです。人類学的視点を解説するなどという目的をもたない本を人類学的に「読む」ことによって、つまり「読みかた」をとおして人類学的視点を浮き上がらせるというやり方を採り、現代社会を生き抜くヒントにしてもらおうというわけです。 これから6回にわたり、坂口恭平
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