板橋区のあるアパートに男が一人で住んでいた。彼は学生でもないのにここ二ヶ月間全く働かずにいたが、それは自分が何をやりたいのかわからなかったからだった。その間、何度も新聞や雑誌やネットの情報を調べ、待遇がよさそうなものに応募しようとしたが、どうしても電話をかけることができなかった。時間が経つとともに、貯金は確実にゼロに近づいていくし、大学を出て一人前の男と見られる年齢の今になって無職でいる自分に、北海道の実家で暮らす父や母から将来への心配や非難の声が聞えてくるようで、このまま何もせずにこの状態を続けるのは辛いと感じていたが、何をやりたいのか、自分がどんな能力を持っているのか、そのどちらもが曖昧なまま、仕事の内容ではなく給料とか勤務地とかだけで決めてしまうと、ただただ時間を無駄にして終わってしまうような気がして怖かった。そのせいで求人を調べてもどれがいいのか決められなかったのだ。とりあえず、そ