音楽ジャーナリストによる『カインド・オブ・ブルー』の、著者が言うところの「レコード」本。レコード史上に残る名盤『カインド・オブ・ブルー』がどのようにして作られたのかを追ったドキュメントである。中心になるのは、二回にわたって行われた録音の実際がどのようなものであったか。コロンビアから提供されたマスター・テープを実際にスタジオで聴き、当時のことを記憶する関係者にインタビューし、どのテイクは誰の失敗によって没になったか、どんなノイズが混じったのか、それらに対するミュージシャンたちの反応を、いちいち事細かに文章化している。 もちろん、読むだけで十分面白いが、できれば実際にステレオでレコードを聴きながら本文にあたることをお勧めする。同じアルバムでありながら時間をおかれて録音された二回のセッションで、録音のマイク位置が逆転しているキャノンボール・アダレイとジョン・コルトレーンのソロの受け渡しの変化が手