モリスにとって工芸美術は、自然の尊重、素材の知識、技術の知識、生活への知識、文化や歴史への知識を活用することで生み出されるべきものである。美を事物の生成に必要な時間*1の遵守によって裏付けること、それこそが、利潤を最優先に計算された労働に対し抵抗する美術工芸、労働のあるべき姿である。モリスは、自分たちの売り出した壁紙がセンスのない使われ方をされていることに落胆させられていたようであるが、問題は制作に注がれた道徳、美術、形而上的なるもの、なのである。それが、モリスの言う日用品を芸術にすること、すなわち「豊かさ」の価値である。 モリスの手がけた「美術」とはおもに装飾(被覆装飾)である。用いられる染料や素材の選択および制作技術において、それがモノとして正しく作られる必要はもちろんだが、装飾としての機能の上でもまた正しくあらねばならない、とされる。壁紙であれ絨毯であれ、それぞれ事物の用途、用いられ