これは卒論の要旨をさらに2010年2月10日の審査のために書き改めたものである。文意不明瞭を当日指摘されたが、それもまた現実とて、WordPressにあはせた見た目上の改変のほか、さらに改めることはしなかった。なお、この問題にご関心の向きは、拙論よりも、まったく独立に書かれた、 白井純(2010)「キリシタン版前期国字版本の仮名用字法について」『国語国文研究』137 に就くべきであらう。もちろん、こちらのほうが論ずる範囲がひろいし、本稿の興味とぴったり一致するものではないが。 主題について 本研究は,日本イエズス会版において,日本語活字をどのように開発したのかという問題を主題とする。そのうえで,今回は,イエズス会が1593年に刊行したと考えられる『病者を扶くる心得』を穿鑿することとした。 日本イエズス会版は,16世紀末から17世紀初頭にかけて,イエズス会日本(副)管区が出版した諸書のことで