姉妹編『ここにあり』がいまいちだったのであんまり期待していなかったのだけれど、こちらは好みに合う作品が多かった。もともと好きな作家はともかく、名前すら知らなかった著者の作品が当たりだったのは、アンソロジーを読んでいてとても得した気分になれます。解説対談で宮部氏が(たぶんわざと)深読みし過ぎたりとんちんかんなことを言ったりして、それを北村「先生」がそれとなく軌道修正するやり取りも、読者に親切だし面白い。 「華燭」舟橋聖一 ★★☆☆☆ ――只今、御指名に預かりました日熊でありますが、本夕は名だたる朝野の名士が、ずらりと並んでおいでになる真ン中で、私のような末輩者が立上って何かお話を致すということは、まことに僭越きわまることと……。 オヤジのスピーチ(といってもまだ若いんだろうけど)のくどさつまんなさを皮肉っている以上、作品のギャグやユーモア自体もオヤジ臭いものになってしまうのは致し方のないこと