群雄たちがその双肩(そうけん)に国の命運を背負って荒野を駆け巡っていた光景がまざまざと浮かび上がる『三国志演義(さんごくしえんぎ)』。 彼らは一日一日どころかその一瞬一瞬を真剣に生きており、その表情すらもどこか堅苦しくて厳(いか)めしいイメージがありますよね。しかし、彼らだって人間ですからだらだらとのんびり床に転がって寛(くつろ)ぐこともありましたし、くだらない話に花を咲かせて子どものように大口を開けて笑うこともありました。そんな彼らが楽しんだという笑い話を集めた本が三国時代には編まれています。 その本の名は『笑林』。魏の邯鄲淳(かんたんじゅん)が著した中国最古の笑話集です。現在は既に散逸してしまって手に取ることのできない本ですが、何と『故郷』や『阿Q正伝』の作者として名高いあの魯迅(ろじん)が『古小説鉤沈』の中に数十篇の話を整理して収めているのです。そんなわけで我々も読むことができる『笑