サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
ノーベル賞
madoken.jp
20世紀初頭にあらわれてきた近代建築を特徴づけるひとつの要素に、「大きな窓」の存在がある。すなわち、石や煉瓦による伝統的な西洋建築における小さな窓とは対照的な、鉄・ガラス・コンクリートといった工業材料を用いて建設される「自由な立面」(ル・コルビュジエ)、およびそれによって可能となる大きな開口部は、明るく透明なモダニズムのイメージを形成するうえで大きな役割を果たしてきた。同時にまた、これは単にデザイン上の革新であるだけなく、産業革命以後に形成された大都市における、過密で不衛生な状況に対する解決という社会的課題をその背景としたものでもあった。 しかし、仮に先進技術による衛生的な住環境の実現を近代建築の目標とするならば、「大きな窓」の存在はそれほど必然的なものではないかもしれない。というのも、開口部を通した光や新鮮な空気の導入という窓の役割は、ほかの手段によって代替され得ないものではないし、近代
金物職人として自身のアトリエを立ち上げながら、ル・コルビュジエをはじめとした先進的な建築家との協働を通して、自身もモダニズムを先導する建築家となっていったジャン・プルーヴェ。建築だけではなく家具のデザインにおいても知名度が高いプルーヴェは、戦後の復興期には、工場で製作した部品を現場で組み立てるプレファブリケーションの分野を切り開いた。プルーヴェの実践を構法と意匠の両面から研究している構造家の横尾真が、実験的な窓の試みを解き明かす。 1901年フランス、ナンシー市に生まれたジャン・プルーヴェは生涯にわたって多くのデザイン(主に家具や建物のコンストラクション)に関わった人物である。キャリアの初期は、アール・ヌーヴォー、ナンシー派を率いていた父であるビクトール・プルーヴェの影響を受けて、エミール・ロベールの下で金属細工師の修行を経て、鋳鉄職人として活動していた。晩年はパリに建つポンピドゥー・セン
まるで窓がないような世界を、演劇作品や小説で描いた大家、サミュエル・ベケット。哲学者ライプニッツの影響を受けたその世界観の研究者・森尚也さんによれば、ベケットは「独我論」を象徴する「閉ざされた窓」から、やがて「共生」にかろうじて通じるような「小さな窓」について書いていったといいます。ベケットのヴィジョンは、今の私たちに問いかけるようです。 「そこで私は家へはいって、書いた、真夜中だ。雨が窓ガラスを打っている。真夜中ではなかった。雨は降っていなかった。」(ベケット『モロイ』安堂信也訳) 20世紀演劇の古典となった『ゴドーを待ちながら』(パリ初演:1953)を書いたサミュエル・ベケット(1906-89)の小説の代表作『モロイ』(1951)結びの一節である。「窓」を喚起しつつ、すぐさま掻き消される「窓」。ぼくにとってはこれが、最初の一撃を受けたベケットの不思議な「窓」だった。 1988年の秋、英
あるひとつの家のリビング・ルームを定点観測しながら、紀元前から西暦2万年の未来までを自在に行き来するグラフィック・ノベル『Here』。 2014年に発売されると、ニューヨーク・タイムズを始めとするメディアを中心に評判を呼び、現在までに20カ国語以上の言語に翻訳されている。時間と空間、そして媒体の枠組みをも越えるこのユニークな作品がどのようにして生まれたのか──著者のリチャード・マグワイア氏に話を聞いた。 ──『Here』では数百ページにわたり、ひとつの部屋の片隅だけを描いていますが、そこに複数のコマが配置されることで、その場所で異なる時間に起きた出来事が同時に表現されています。この手法にはどのようにして至ったのでしょうか? 同じ場所に複数の時間を表示する物語のアイデアが浮かんだのは、当時新しいアパートに引っ越したばかりで、そこに以前住んでいた人のことをよく考えていたからです。そこで漫画のコ
深淵をのぞくとき、深淵もまたこちらをのぞいているのだ──とは哲学者フリードリヒ・ニーチェの言葉ですが、ミステリ小説に描かれてきた「窓」もまた、ゾクゾクとするような二面性を持っているようです。博覧強記のミステリ評論家・千街晶之さんによる古今東西の作品の解説から、「窓」に秘められた面白さが見えてきます。 ミステリ小説に登場する密室トリックは、(もちろん例外はあるにせよ)大抵は扉か窓のいずれかに何らかの仕掛けがあるものと相場が決まっている。エドガー・アラン・ポーが1841年に発表し、今では世界最初のミステリ小説と位置づけられている「モルグ街の殺人」(『モルグ街の殺人・黄金虫』所収、新潮文庫)からしてそうなのだから、ミステリと窓との関わりはジャンルの始まりの時点で既に密接なものだったという見方も可能だろう。しかし、ミステリにおいて窓が果たす役割は、決して密室トリックに限定されているわけではない。
中国四川省の省都、成都からバスに乗り込み、東チベットへ向かった。四川省西部、ガンゼ・チベット自治州の色達(セルタ)にある、チベット仏教ニンマ派の僧院「色达喇荣寺五明佛学院(ラルン・ガル・ゴンパ)」を目指す。 山崩れによる通行止めに遭いつつ、17時間かけてなんとか標高4000mほどの地点へ着いたのは深夜であった。雨が降ったのか、ぬかるんだドロドロの道を重い荷物と共に歩く。同じバスに乗る巡礼に来たチベット人家族たちと味のしない麺を食べて、小さなバスに乗り換え宿へ向かう。真っ暗な道のりの中、無数の窓の明かりが浮かんでいる。一つひとつの家は小さいが、かなりの密度であるようだ。しかしこの町の全貌を知るには、翌日の朝まで待たなければならなかった。 宿はバスを降りた地点からかなり高い場所に位置していた。大きな行事があるらしく、他所から来たチベット人がたくさんいた。僧侶たちはみな、あずき色の袈裟を着ている
文化・宗教が色濃く存在し、建物にも装飾が用いられるのが当たり前だった時代において、あえて華美な装飾をあしらわずにつくられた特異な建物、それが茶室である。茶が主役とはいえ、四時間にも及ぶ茶事で客を退屈させないために、そこには一見して分かる装飾が無くとも、さまざまな工夫が隠されている。本連載では日本建築に大きな変化をもたらした茶室の窓に着目し、その特色を解説していく。 妙喜庵待庵 第1回として、国宝の茶室・妙喜庵待庵を取り上げる。待庵は、利休がつくったとされる二畳敷隅炉1の席で、現存する日本最古の茶室とされている。待庵なしにはそれ以降の茶室が成立しないと言い切れる、非常に重要な茶室である。 自由になった茶室の窓 待庵以前、木造である日本建築の開口部は、その位置や大きさを柱や長押(なげし)によって半ば自動的に決められていた2。 ところが待庵を構えるときに、利休が土壁を塗り残しただけでつくられる「
series Light Matters Why Norman Foster Scoops Daylight into his Buildings Light, despite its intangibility, remains a pivotal element in architecture. Lighting design expert Thomas Schielke reflects on Norman Foster's experimentation with light, driven by his pursuit of the art and science of architecture. 24 May 2024 series Windows of Japanese Modernist Architecture The Windows of Hiroshi Hara’s
Columns The Windows of the Diffendorfer Memorial Hall and University Chapel at the International Christian University (ICU): Preserving, Passing On, And… The International Christian University’s campus plan was originally designed by W. M. Vories & Co. and later developed by Antonin Raymond. The Diffendorfer Memorial Hall and University Chapel, which both underwent extensive renovations when passe
series Jean Prouvé’s Windows The Windows of the Cachat Buvette in Evian|Jean Prouvé’s Windows #4 After resuming his creative activities with his new firm, Jean Prouvé Constructions, Prouvé presented an alternative version of the béquille in a project he had been working on concurrently with the Villejuif Temporary School, where he first brought the structural system to realization. The fourth inst
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『WINDOW RESEARCH INSTITUTE』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く