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大谷翔平
neurophys11.hatenablog.com
さて、睡眠について。 精神科医として、患者さんにしっかり寝て欲しい、というか寝ないと治るのも治らないとは毎日言ってはいるものの、実は個人にとって理想的な睡眠時間というのは無いのだろうと思っています。 もっとも長寿なのは8時間睡眠だった、とか、現代人は睡眠がとにかく足りていないとか、言うけれども、一方で、現代の社会的状況から来る要請の中で、理想的な睡眠時間が取れるはずもなく。取れるはずもないのに、ああ今日も睡眠時間が足りなかった、とか、最低6時間は寝ないと不健康になってしまうと強迫的な不安を抱えるのであればそれはもったいないと言うか...。 覚醒物質とも言うべき「オレキシン」を発見した柳澤正史氏のインタビュー記事が良かったので、ご紹介。 www.lifehacker.jp 柳澤氏のインタビューで、dneuro的に印象的な点を挙げると... 1)6時間以下の睡眠時間で十分な真のショートスリーパ
注意欠陥多動性障害(ADHD)といえば、多動、不注意、衝動性が3大症状として挙げられるのが標準的。ただ、実はその3つだけが本質というよりも、以前書いたような報酬系の不全(⇛学習できないのは報酬系の不全が問題)とともに、総合的に何か課題をこなすだけの実行機能を加えた5つの領域に問題があると言っていい。つまり彼らは与えられた課題に集中し、何をするか頭に留め置き、やる気を持続し、目を覚まし続け、そして感情を制御すること(つまんねえとか思ってもそれに負けないこと)が難しい。とはいえ、そういったADHDの困った性質があらゆる場面で来るかと言えば、明らかに違う。それはADHDの偉人や有名人を考えたとき、ADHD特性が欠点なだけでないことがわかる*1。 さて、ADHDの諸問題に関して、イェール大学の研究者(Thomas E Brown)の著作を抜粋したpdf記事が新鮮だったので、それを更に抜粋して(笑)
更新の間隔がこれまでで最長になってしまった…色々と考えることがあったので少数の待ってくださっている方にはすみません。 www.neuroelectrics.com 研究室ではスペイン(珍しい!)のベンチャー企業Neuroelectrics社が開発したSTARSTIM tCSという刺激装置を手に入れた。これはなかなかスグレモノで、PCと刺激装置を図のように装着し、Bluetoothによるワイヤレス接続で繋げてtDCSが可能になっている。すこぶる使いやすいので研究も進むかなと期待。ちなみに代理店購入でおよそ120万程度。*1 脳は変わる。可塑性を持つ。 かつて人の脳は成長してしまうともう変わらない、と考えられていた時期があった。 基本的に脳の成長は一定の年齢に達すると止まり、逆に年齢とともに成長どころか下り坂…。脳細胞は20歳を超えると死滅する一方というのはよく聞く話。ある学説によれば大脳皮質
・薬を使って良くなっても意味が無いのでは? ・依存症にならないの? ・もう絶対やめられないのではないか ADHDの方に薬を使うというとき、特に勉強している家族の方からはこんな疑問を呈されることが多い。一方、医者の立場からすると、ADHDには薬が有効であり、どちらかといえば積極的に使用した方が良い場合が多く感じられる。しかし、薬を使う、ましてやADHDというどちらかといえば疾患というよりも特性(性質)上の問題に対して、薬を使うことに直感的に躊躇し、葛藤する人は多いし、その感覚そのものは健全だと思う。 なので、自らの、もしくは子供を含めた家族のADHD特性に対して薬を使うとはどういうことなのか、改めて考えていきたいと思う。 決心だけじゃどうにもならない ADHDの3主徴として、多動・不注意・衝動性が挙げられることが多い。 adhd.co.jp ストラテラ(一般名:アトモキセチン)を発売している
自殺数に関してwebで検索していると気になる記事が結構あって、その中には日本の自殺者数は本当は10万人を超えているみたいなエントリに当たる。例えばこんな⇛【マジかよ】毎年報道される日本の自殺者数は3万人どころじゃなかった!? 「遺書が無いと自殺ではなく変死扱い」等が話題に これが本当かを考えるに当たり、自殺統計をつらつら眺めてみた。 ちなみに、遺書が無いと変死扱い⇛自殺に組み入れられない、ということは無く、遺書ありと遺書無しとに分けてきちんと数えられているようだ。自殺なのに自殺ではないと判断されてしまうこともあるだろうが、遺書の有無と変死扱い、は違う話。 自殺者数は最近減少している 日本の自殺者が年間3万人超えで推移しているなんて報道は数年前まで。相変わらず自殺死亡率(10万人あたりの自殺者数)では先進国の中で最低なんだが、それでも今は減少傾向。2016年の自殺者数は21,897人、一番多
発達障害についてはやはり「障害」と括られることで否定的なことが書かれることが多い。発達障害の持つ特性が障害になる一方かというと、そんなわけでも無いというのが今日の論点。実際の所、あぁこの人ASDだなあという偉大な人はそれなりにいるし、ADHDを公言している著名人もいる。 特性の強みに関しては、例えばASDでは⇓のような就職関連のサイトで、こだわりを上手く活かせば…とか、人が退屈に思うことでも不満を言わずに作業レベルを落とさずに長時間継続できる、といった文脈が多いかと思う。 hataraku-chikara.jp ただ、一方でそれは「障がい者」の枠の中でこういった強みがありますよ、と言うだけであって、障がいと無関係な積極的な強みとして語られることは少ないのは仕方が無いとは言え残念な部分ではある。 ASDもADHDもその特性は条件が揃えば強みだ 条件が何か、というのは少し置いておいて… ・空気
今年もはや3月末になって、最初の投稿が残念ながらこんなに遅くなってしまいました。 1つには代表を勤めている会社のブログに注力していることもありますので...と言い訳ですけどね。 さて、会社(ライデック)のブログでこの4月から発売予定の片頭痛の注射予防薬、ガルカネズマブについてまとめてみました。 日本イーライリリー社と第一三共が共同で販売するようです。商品名はエムガルティ。 www.tsudanuma-ridc.com 以前も実は片頭痛予防の注射薬についてまとめてみてます。 neurophys11.hatenablog.com もう3年前です。 当時私が把握していたのはそこで紹介したエレヌマブとフレマネズマブだったんですが、まだかな〜と思っていたらガルカネズマブのほうが先になったんですね。 薬理学的機序としてはフレマネズマブと同じです。CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という血管拡張
前回のblogに書いた、多くの人が持つ疑問、2つに関連して今日は書きたいと思う。 その2つは… ・依存症にならないの? ・もう絶対やめられないのではないか どうしてそんな疑問が出てくるのかと言えば、ADHDに使う薬、特にコンサータ(メチルフェニデート徐放錠)が「中枢刺激薬」に分類され、薬理学的にも法律上覚せい剤に分類されるアンフェタミンに作用機序が近いことが心配されるからだろう。そういった知識が無くても、ADHDのように多動や不注意が問題になる特性に対して「刺激」してしまったら余計悪化するのでは?と危惧するのも気持ちはわかる。 どんな薬でも投与によって起きた副作用ないしは有害事象は投与中止の理由となる。コンサータやストラテラの投与試験・研究における中止理由を見てみると、何に気をつけたらいいかがわかるのではないか、というのが本日のお題。 コンサータ長期投与試験で依存症は発症したのか? コンサ
この1年、自分のいるクリニックでは発達障害の診断や現在抱えている不適応や気分障害・不眠など精神科的症状に悩む人の受診が増えた。国際的な診断ツールである、ADOS-2(本人対象)やADI-R(養育者対象)を用いての出来るだけ客観的な自閉症鑑別の手段を使っていること、そういったツールを使えて発達障害に元々詳しい心理士がいること、地理的に理科系の大学が近辺に複数あることといった条件は重なっている。ただ、実際に数、特に現在の状況に不適合な発達障害者が増えて顕在化しているのだとも思う。 疾患や障害と捉えるのが正しいのか? 以前も書いた(⇛ASDは治療するものなのか)ように、ASDにしてもADHDにしても、必ずしも「疾患」や「障害」と考える必要はない。それぞれの性質を持ちつつも、能力が環境にマッチして発揮できており、周囲から認められている人に敢えて医学的診断は必要ないだろう。「ちょっと変わり者だけどデ
(補足)ここを読んでくださる方はコチラもセットでどうぞ ⇛目の前の誘惑に耐えるのは難しい ADHD(やASDもだが)の子と接していると、褒めても通じないということがよくある。叱るんじゃなく褒めて行動を増やそうと実践するのに、褒めた行動が次につながらない。やっぱり次も同じ行動を起こしてしまうことが重なり、ついには怒ってしまう。おかしい…という思いにならざるを得ない。 何故だろう?そう考えた時にたどり着く1つの結論は、褒められたことが快感に繋がっていないのではないか?ということだ。そう、褒められたことが嬉しければ次はその望ましい行動をするはずなのに、褒められた経験の喜びが乏しいからこそ行動が改善されないのでは?と。 先日出席した研修会では、福井大学教授の友田明美先生(子どものこころの発達研究センター発達支援研究室 HPはコチラ)の講演会だったが、ADHDと報酬系の話題であった。 報酬系…心地良
性格は遺伝するんですか? よくそう問われるが、実際のところ答えはyes and noだ。 結局子供は親2人のハイブリッドなので、持っている遺伝子は他人よりずっと近い。親子そっくりは容姿だけでなく、性格や人格(ここでは余り区別しない)にも当てはまる。とはいえ、勿論おおよそ半分は違うので*1容姿・性格ともに、似ても似つかない親子は数多いわけだ。 では一番似ているはずの一卵性双生児はどうか。 基本的に一卵性双生児は同じ遺伝子のセットを持っている。だからとり分け幼いころの容姿は親でも区別がつかないほどだ。 ⇛ 三つ子が見分けられないおじいちゃん(「探偵!ナイトスクープ」2015.10.16) (映像は自分で探すべし) ただ、年をとると双子でも違いが目立ってくる。同じ環境で育ってもそうだ。 なぜ?という疑問に関して1つ答えが出ていて、たとえ同じ環境下にあっても遺伝子は生まれて何十年も経つとDNAメチ
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