現代世界の権力論を、フーコーから始まって、ドゥルーズ(+ガタリ)、アガンベンと渡り、ネグリ(+ハート)の「帝国‐マルチチュード」論へと結びつけるという構想の本である。 発想は東浩紀(id:hazuma)・大澤真幸『自由を考える』(NHKブックス、isbn:4140019670)と並行していて、アガンベンの「ムーゼルマン」論*1や「掟の門」論が出てくるのも共通し、議論の進んでいく方向も似ているのだけれど、この本には東さんや大澤さんへの言及は一つもない。ちなみに、WWFさんの夏の本の原稿のために読みはじめたのだけど、締切に間に合わなかった本である。 私はこの本を読んでようやく「生権力」という概念が理解できた。「生権力」というのは、たんに人を「生かす権力」なのではない。近代までの王の権力や近代国家の多くの権力が「権力の命令に違反した人には死とか苦痛とかを与える」という権力だったのに対して、「生権