それは1977年のこと。私は小学5年生。学校が終わると、仲が良かったシオタの家に、同じく仲が良かった友だち2~3人と向かう。 ポータブルレコードプレイヤーで、キャンディーズのシングルを聴いたり、アブドーラ・ザ・ブッチャーやテリー・ファンクになりきったプロレスごっこをしたりと、夕陽の差すシオタの部屋で、他愛のない時間を過ごすのだが。 その部屋の奥に、シオタの兄貴(大学生)の部屋があったのだ。扉はめったに開くことなく謎めいているのだが、偶然、何かの拍子に扉が開いた。中には、洋楽のレコードがぎっしり並んでいて、壁にはイーグルスのポスターが貼ってあって、その横には、レスポールモデルのエレキギター。 扉の中から出できたのは、初めて見るシオタの兄貴。髪は襟にも届きそうな長髪で、でもうす汚い感じではなく、きれいにブローされている。冬だったのだろうか、暖かそうなダウンジャケットに身を包み、キャメル(タバコ