サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
都知事選
www.the-noh.com
国立能楽堂提供:『能之図(下)』より「能 鉄輪」 ある夜、貴船(きぶね)神社[京都市左京区鞍馬貴船町]の社人に夢の告げがありました。丑の刻(うしのとき・うしのこく)[午前2時頃]参りをする都の女に神託を伝えよ、というものです。真夜中、神社に女が現れました。女は、自分を捨てて後妻を娶った夫に、報いを受けさせるため、遠い道を幾晩も、貴船神社に詣でていたのです。社人は女に、三つの脚に火を灯した鉄輪[五徳]を頭に載せるなどして、怒る心を持つなら、望みどおり鬼になる、と神託を告げ、女とやり取りするうちに怖くなり、逃げ出します。女が神託通りにしようと言うやいなや、様子は変わり髪が逆立ち、雷鳴が轟きます。雷雨のなか、女は恨みを思い知らせてやると言い捨て、駆け去りました。 女の元夫、下京辺りに住む男が連夜の悪夢に悩み、有名な陰陽師、安倍晴明を訪ねます。晴明は、先妻の呪いにより、夫婦の命は今夜で尽きると見立
能の大成者・世阿弥(ぜあみ)は、今でこそ高い評価を得ていますが、その著書である『十六部集』が発見されたのは明治16年(1883年)。それまでは、長い間、一般のみならず、能楽師の間でもほとんど忘れられていたのです。 世阿弥が書き記した珠玉のことばには、自らの芸と人の世に対して鋭い洞察が見てとれます。そして、それは時を超えて、現代に生きる我々の心をも打ち、社会を生き抜く知恵を授けてくれるのです。 波乱の生涯 世阿弥(ぜあみ)は、南北朝時代の1363年、大和四座の人気スターであった観阿弥(かんあみ)の長男として生まれました。幼名を鬼夜叉、本名、元清といいます。 11歳の時、京都・今熊野での演能で、父・観阿弥と供に獅子を舞ったことがきっかけとなり、世阿弥は一躍人気役者となります。この時、若き将軍・足利義満に出会い、以後、世阿弥は、彼の寵童(ちょうどう)として、そば近くに召し使われることになりました
国立能楽堂提供:『能之図(上)』より「能 葵上」 光源氏の正妻、左大臣家の息女の葵上は、物の怪にとりつかれ重態でした。回復させようと様々な方法を試みますが、うまくいかず、梓弓(あずさゆみ)の音で霊を呼ぶ「梓の法」の名手、照日(てるひ)の巫女を招き、物の怪の正体を明らかにすることになりました。 巫女の法に掛けられて姿を表したのは、元皇太子妃で源氏の愛人の六条御息所(みやすどころ)の怨霊です。御息所は、気高く教養深い高貴な女性ですが、近頃は源氏の足も遠のき、密かに源氏の姿を見ようと訪れた加茂の祭りでも車争いで正妻の葵上に敗れ、やり場のない辛さが募っていると訴えます。そして、葵上の姿を見ると、嫉妬に駆られ、後妻打ち(うわなりうち)〔妻が若い妾(めかけ)を憎んで打つこと〕で、葵上の魂を抜き取ろうとします。 家臣たちは、御息所の激しさにおののき、急ぎ偉大な法力を持つ修験者(しゅげんじゃ)横川(よかわ
京都の町に、西陣織の素晴らしい名工の方がいて、復元から新作に至る幾多の素晴らしい能装束を魔法のように織り成しているという。伝説めいた話に魅せられた私たち編集スタッフは、その主を訪ねて東路をたどり、秋色迫る京の都へ上った。 主とは、2008年に104歳を迎えられた山口安次郎さんである。ほぼ一世紀にわたって西陣織の織師として卓越した技術を培い、西陣織の最高峰を究めた名匠だ。50年ほど前からは、もっぱら能装束の製作に携わり、拵(こしら)えた装束の数は、およそ300領(「領」は能装束の数の単位)におよぶ。今なお、現役の職人であり、機織の前に座る。 京都駅から堀川通を上の方へ進み、西陣の町中にある安次郎さんの工房へ。いつとはなく、不思議なワクワクした気持ちが満ちてくる。そこで私たちを待っていたのは、真の伝説の人だった。 「菊慈童/枕慈童」の主人公のような山口安次郎さん ようやく探し当てた山口さんのご
『風姿花伝』の第一章を、「年来稽古条々」といいます。この本来の趣旨は、年齢に応じた稽古の仕方を示すもので、年齢に応じた対処の仕方や、歳を経ていく自らについて、後世に伝えるものですが、教育者として、親として、どのように子ども(若年者)に対応していったら良いのかという観点や、年齢を経ていくことにも言及しており、世阿弥の教育論、人生論としても示唆に富んだ内容となっています。 幼年期(7歳頃) 「能では、7歳ごろから稽古を始める。この年頃の稽古は、自然にやることの中に風情があるので、稽古でも自然に出てくるものを尊重して、子どもの心の赴むくままにさせたほうが良い。良い、悪いとか、厳しく怒ったりすると、やる気をなくしてしまう。」 世阿弥は、親は子どもの自発的な動きに方向性だけを与え、導くのが良いという考え方を示しています。親があまりにも子どもを縛ると、親のコピーを作るだけで、親を超えていく子どもにはな
日本全国の能公演スケジュールです。実際の上演やチケットの発売では、ここに掲載された内容が変更される場合があります。チケットをご購入の際は、必ず最新の情報をリンク先の各主催団体や公演劇場などで直接ご確認ください。 間違って購入したチケットの払い戻しに関しては、当サイトではその任を負いかねます。なお、初心者のための入門講座や体験ワークショップ、能面や装束の展示会などは「能楽イベント情報」のページをご覧ください。
幼い頃から能に接していたり、あるいは大人になってから能に魅せられたり、と、十人十色の能とのご縁。 さまざまなジャンルの著名人たちが能との関わりや魅力を綴るエッセイ「わたしと能」。 子供の頃、庭には池があった。ぼんやり水辺にいるのが好きだった。水中を泳ぐマツモムシやオタマジャクシ、鯉や金魚。水底に沈んだ陸にいたはずの昆虫の死骸。ヤゴが羽化し、トンボの姿になっていくのを一日眺めたり。私にとっては大事な時間だった。 ということを後にある雑誌のインタビューで話したところ、うまく文章にならない私のとりとめのない言葉を、「生と死のバランスを取るような時間だった」とまとめて下さったと記憶している。 高校3年、私は漫画家となった。池の水底や冬はストーブの火を見ていると、不思議と集中できストーリーが生まれた。 物語を作ることは夢を見ることと似ている。夢というのは、起きているときに入った情報を必要・不必要に振
国立能楽堂提供:『能之図(上)』より「能 高砂」 醍醐(だいご)天皇の御世の延喜年間のこと、九州阿蘇神社の神主友成(ともなり)は、都見物の途中、従者を連れて播磨国(兵庫県)の名所高砂の浦に立ち寄ります。友成が里人を待っているところに、清らかな佇まいをした、一組の老夫婦があらわれました。松の木陰を掃き清める老夫婦に友成は、高砂の松について問いかけます。二人は友成に、この松こそ高砂の松であり、遠い住吉の地にある住の江の松と合わせて「相生(あいおい)の松」と呼ばれている謂われを教えます。そして『万葉集』の昔のように今の延喜帝の治世に和歌の道が栄えていることを、それぞれ高砂、住の江の松にたとえて、賞賛しました。老翁はさらに、和歌が栄えるのは、草木をはじめ万物に歌心がこもるからだと説き、樹齢千年を保つ常緑の松は特にめでたいものであるとして、松の由緒を語ります。やがて老夫婦は、友成に、自分たちは高砂と
世阿弥が残した『風姿花伝』を始めとする多くの著作は、演劇や芸術についての考えが述べられたものですが、世阿弥のことばの深さはそれだけではありません。今でいえば、「観世座」という劇団のオーナー兼プロデューサーでもあった世阿弥は、劇団の存続のためにはどうしたらいいかを考え抜きました。 それは役者の修行方法から始まり、いかにライバル劇団に勝ち、観客の興味をひくにはどうすべきかなど、後継者に託す具体的なアドバイスを記したものが、彼の伝書です。いわば、芸術のための芸術論というよりは、生存競争の厳しい芸能社会を勝ち抜くための戦術書ともいえるものです。 世阿弥は、観客との関係、人気との関係、組織との関係など、すべては「関係的」であり、変化してやまないものと考え、その中でどのように己の芸を全うするか、ということを中心に説いています。 「能」を「ビジネス」、「観客」を「マーケット」、「人気」を「評価」として読
国立能楽堂提供:『能之図(下)』より「能 隅田川」 春の夕暮れ時、武蔵の国隅田川の渡し場で、舟頭が最終の舟を出そうとしていると旅人が現れ、女物狂がやってくると告げました。女は都北白河に住んでいましたが、わが子が人買いにさらわれたために心が狂乱し、息子をさがしにはるばるこの地まで来たのでした。舟頭が、狂女に、舟に乗りたければ面白く狂って見せろ、と言うので、女は『伊勢物語』九段の「都鳥(みやこどり)」の古歌を引き、自分と在原業平(ありわらのなりひら)とを巧みに引き比べて、船頭ほか周囲を感心させ、舟に乗り込むことができました。 川を渡しながら、舟頭は一年前の今日、三月十五日に対岸下総(しもうさ)の川岸で亡くなった子ども、梅若丸の話を物語り、皆も一周忌の供養に加わってくれと頼みます。舟が対岸に着き、みな下船しても、狂女は降りようとせず泣いています。船頭が訳を尋ねると、先ほどの話の子は、わが子だとい
能は日本が誇る伝統芸能。とはいえ、実際に能楽堂に足を運んで観賞した経験のある日本人はまだまだ一握りです。そんな能の未体験者や初心者から寄せられる疑問や驚きの質問に、the能ドットコム編集部がお答えします。 「能」は、日本の重要無形文化財であり、ユネスコからも「人類の口承及び無形遺産の傑作」として認定されています。the能ドットコムでは、能のすべてがわかる読み物や、舞台の息吹きが感じられるフォトストーリー、能の表舞台やバックステージで活躍する人びと、観能の前でも後でも役立つ演目事典や能面事典、全国の公演やイベントスケジュールなど、さまざまな情報を満載。「なんだか、むずかしそう」と思っている能未体験者から上級者まで、それぞれに楽しめる内容です。 English |入門:能の世界 |世阿弥のことば |能の海外交流 |能楽トリビア |演目事典 |能面事典 |用語事典 |全国能楽堂マップ |能を支え
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『the-Noh.com : Comprehensive Web site on Japanese Noh Play』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く