我妻榮先生といえば民法学者として法曹界では知らない人はいないであろう泰斗であり、改めていうまでもなく数々の優れた業績を残しているのですが、我妻先生の著作や講演集の中には、我妻先生ご自身の勉強の仕方について述べているものがあります。 狭く深くという精神我妻先生は、山形県米沢市の出身ですが、米沢から出てきて、第一高等学校を受験したときのことをこのように回想しています。 当時は、三月に中学を卒業して六月に入学試験だったから、その間の三カ月を、神田のニコライ堂の下にある開成中学の予備校に通った。東京の中学を卒業した学生たちは、何と利口にみえたことだろう。田舎の中学の秀才は、言葉もロクに通じない。焦燥と不安の三カ月!文字通り骨身をけずった。(我妻榮『民法案内1 私法の道しるべ』228頁〔勁草書房、2005〕) 今は開成中学・高校は西日暮里に移転しています。遙か昔、ここの高校を受けに行った私も、周りの