リニア中央新幹線静岡工区の着工を認めなかった川勝平太氏の静岡県知事辞職で、同工区着工に向けた議論が前進すると期待されている。5月の知事選では最大の争点とされながら具体的な論戦とはならなかった。だが、その傍らで、市内に工区がある静岡市は着々と課題解決の方策を練り、JR東海も市が示した新たな考え方に一定の理解を示す。リニア問題は次の段階に入りつつある。 国の考え方否定川勝氏が辞職願を提出したのは4月10日。その前日夕刻、静岡市役所内で「中央新幹線建設事業影響評価協議会」が開かれた。増沢武弘静岡大客員教授が会長を務め、静岡工区への対応を検討する市の会議だ。テーマは「南アルプスの環境保全措置の考え方」。特に、工事に伴う沢の水量減少や沢枯れへの対応が焦点だった。 静岡工区付近の南アルプスの山々。沢の水位低下が懸念される一方で、シカの食害により多くの植生が危機的状況にあるという=令和5年10月、静岡市