日本語における「サ行とハ行の揺れ」 と 出雲弁 1.「ひちや」の問題 日本語における東西の比較では有名な「ひちや」の問題がある。 「質屋」の看板やのれんに東京ではまともに「しちや」と書かれているが、大阪では「ひちや」と書かれているのに驚いた、という話は戦前からよく聞かされた話である。 では数字の「七」はどうか、もちろん大阪では「ヒチ」と発音するわけだが。 ここであらためてお断りしておきたいことがある。 これから延べることは方言に関することである。 「私は今大阪に住んでいるがそんな言葉は聞いたことがない」と云われても困るわけで、方言は必然的に滅びかつ変化してゆくものだから、いま大阪に住んでいる人全体が「ヒチ」と云っているのだ、なんていうお話ではない。 かつてはこんな発音をしていたものだ、というような事柄をことさらに拾ってゆくという保守的ともいえる話なのである。 さて本題にかえって「ひちや」だ