「円珍勅書」(東京国立博物館蔵)の後半部分。敦実ら3人の名前の上に書かれた「中務卿」などの文字は米粒のように小さい 平安時代の「三蹟(さんせき)」の一人で、能書家として知られる小野道風(894~966)筆の国宝「円珍贈法印大和尚(かしょう)位並智証大師諡号(しごう)勅書(円珍勅書)」(東京国立博物館蔵)が直筆ではなく、後世の写しであったとの調査結果を、湯山賢一・奈良国立博物館長(古文書学)がまとめた。 歴史上著名な人物が書いたとされる国宝の文書類について「直筆」との判断が覆されるのは極めてまれ。今後、評価の見直しが求められることになる。 道風は藤原行成、藤原佐理(すけまさ)とともに「三蹟」とたたえられた「和様の祖」。 「円珍勅書」は、延暦寺座主だった円珍(814~891)に対し、醍醐天皇の勅命で「法印大和尚位」に昇任させ、「智証大師」を諡号することを記した墨書で、927年(延長5年)12月