■自然、文化、歴史、記憶の集積 未曽有の大災害をもたらした東日本大震災では、博物館も甚大な被害を受けた。建物はもちろん、収蔵していた文化財、歴史資料や自然史の標本なども流されたり、海水や泥に浸(つ)かるなどの被害を受けた。それらは失われると二度と復元できないかけがえのない地域の財産だ。 写真で見る震災直後の状況にまず驚かされる。なにもかも流された市街地、瓦礫(がれき)に埋まった収蔵施設、藁葺(わらぶ)き屋根だけになった住宅。この厳しい状況から関係者は捜索や修復に取り組み始めた。海水や泥に浸かったものは洗浄が必要となる。ばらばらになった昆虫や植物標本はどうすればよいのか。資料を復元するために全国の研究施設から援助が寄せられた。たとえば最近、ツチクジラの剥製が科学博物館で修復された。 本書は震災の衝撃のさめやらぬ8月に行われた報告集会の記録である。当日は迫真の報告に席を立つ人もなく、タイムキー