枝雀が棋士役で出演した「ふたりっ子」。手前は岩崎ひろみ=NHK提供 演出家の長沖渉君は、NHK時代に将棋をテーマにした連続テレビ小説「ふたりっ子」も手がけていた。枝雀が永世名人役で出させてもろてたんやけど、ちょうど体調が悪くなってきてたころで、ご苦労をおかけしたんです。 「ものすごいハイテンションでしたから。ドラマにえらいノッテくれてはるんやと、喜んでいたんです。でも、今から思うと、鬱(うつ)の前の躁(そう)がきてたんでしょうね」。なんでも、ホテルの宴会場で一緒にドラマに出演してた歌手河島英五さんの「野風増(のふうぞ)」をご本人のギター演奏で、えらい勢いで熱唱してたらしい。「もう死んでもええ!」と言いながら。 それが、収録もいよいよ佳境を迎えるころになって、長沖君の家に早朝に電話をかけてきた。 「エラいことになりました。もうどうしようもありません。もうセリフが全然入りませんねん。も