行政の意思決定を記録に残すことを義務づけた公文書管理法が、今国会で審議中の特定秘密保護法案によって「骨抜き」にされる懸念が高まっている。国の活動を文書に記録、公開し国民の「検証の目」にさらすことは、民主主義社会の大前提だ。アーカイブズ(記録保存)学の観点から、学習院大大学院の安藤正人教授に問題点を聞いた。 ■秘密自体が「秘密」 「行政情報は公開されるのが原則で、非公開はあくまで例外だ」と安藤教授は説明する。すぐに公開できない情報はゼロではないが、わざわざ特定秘密に指定しなくても、既存の国家公務員法や各省庁の規定の範囲内で十分に対応できるという。「例外を特定秘密として抜き出し、単独の法律で規制すること自体が異例ではないだろうか」 秘密指定を「行政機関の長」が行うとした点にも、安藤教授は疑問を呈する。指定の妥当性や、チェック機能が保証されないからだ。「どんな情報をどういう理由で、いつまで
法廷で強姦(ごうかん)罪に問われた被告が言う。「レイプ事件はどの国でも起きている」「性的衝動を抑えるためにやった」。こうした弁明は、犯した罪に向き合おうとせず、正当化するものとして、判決では厳しく指弾されよう。弁護士ならずとも分かることだ。 日本維新の会共同代表、橋下徹氏が言っていることは、これと同様だ。 戦時中の旧日本軍の従軍慰安婦制度について、「必要なのは誰でも分かる」「当時は世界各国が制度を持っていた」と語った。 歴史認識の問題以前に性暴力の肯定につながる、人権意識を著しく欠いた発言だ。本音を語ったつもりだろうが、そうした本音を持つ人物が政治家を務めている異常さに気付いていないという意味で二重に戦慄(せんりつ)する。 橋下氏は強制的に慰安婦にさせられた証拠はないと主張し続けてきた。今回の発言でも「日本が不当に侮辱を受けている」と強調している。 だが、慰安婦問題の本質は強制性
県警察で事件中の初の殉職者となり、県警や事件の被害者の子孫らによって手厚い慰霊が続けられている祝井盛武巡査(1849~77年)。ところが、祝井巡査は無縁仏とされ、子孫が墓碑や慰霊の詳細を知ったのは2005年のことだったという。ひ孫の医師祝井文治さん(65)=東京都=は県警や関係者に感謝しながら、130年の空白を埋めようと悲劇の解明を続けている。 祝井巡査は元薩摩藩士。妻と長男を鹿児島に残し伊勢原分署に勤務していた。 明治10(1877)年、伊勢原の旅館「紙屋」で起きた立てこもり事件で殉職。警察は鹿児島の遺族に連絡を取ろうとしたができず無縁仏になったという。 同郷ということで教善寺(平塚市)の住職が遺体を引き取り墓碑を建立。紙屋の鵜川家も事件から約40年後に慰霊碑を建てた。県警察学校(横浜市栄区)にある招魂碑と合わせ3カ所で慰霊が続いている。 一方の祝井家は、残された長男の代に鹿児島
県立図書館の再編問題について活動している市民団体「神奈川の県立図書館を考える会」が2日、横浜市中区のさくらWORKSでシンポジウム「民間からの政策提言」を初開催した。これからの県立図書館のあり方を議論する中、県の姿勢に対する不信感や、県民の意識の希薄さに対する危機感を指摘する声が上がった。 図書館関係者や県民約60人が参加。大学教授による講演、考える会主宰の岡本真さんによる政策提言に続き参加者全員で討論を行った。 県は県立図書館(横浜・川崎)について、昨年11月に閲覧と貸し出しサービス廃止と県立川崎の廃館を打ち出したが、反対意見に押され今年2月に方針を撤回。閲覧サービスの継続と県立川崎の存続が決まった。 この経緯に対し、2003年に県立図書館のアドバイザーを務めた慶大の糸賀雅児教授は、基調講演で「県の方針は論理が見えない。説明責任を果たしていない」と批判。東京都立図書館の元司書である
県立図書館2館の閲覧・貸し出しサービスを廃止する方向で検討していた県教育委員会が21日、一転して閲覧機能を維持する方針を表明した。県民の意見が多数寄せられたことを理由としている。 知の財産の恩恵を、県民が引き続き受けられる見通しが立ったことを、ひとまず歓迎したい。だが一連の対応では、県立図書館に対する県教委の理念の希薄さが露呈した。貸し出しがどうなるのかも予断を許さない。その意味で今後に不安も残る。県教委は図書館の将来像を真剣に模索してほしい。 横浜と川崎に立地する県立図書館は、県内屈指の104万冊という蔵書を誇る。例えば川崎では1万6千冊という国内随一の社史コレクションなども有し、県民が直接手にとることで蔵書は生きた役割を果たし、県民の文化向上や経済振興に寄与してきた。 ところが昨秋、緊急財政対策に基づく施設見直し計画の一環として閲覧・貸し出しサービスの廃止を県教委が検討しているこ
県が提案していた県立図書館2館の「閲覧廃止」の方針が、3カ月余りで転換された。社史や科学技術の豊富な蔵書で知られる県立川崎図書館(川崎市川崎区)も存続方針が示された。廃止撤回を求めてきた関係者は胸をなで下ろす。この間、問い直されたのは「本を手にとって読むこと」の意味と、図書館自体の存在意義そのものだった。 県の廃止案に「図書館とは言えなくなる」と疑義を唱えた「神奈川の県立図書館を考える会」主宰の岡本真さんは、「まずは一安心」。有志や識者と勉強会を開き、議論を重ねてきた。「県の提案のおかげで議論が深まったとも言える。財政対策を進めながら、経済政策の立案や議員の政策提言などに図書館を使うなど、よりよい形にしていくきっかけに」と注文した。 県立図書館には閲覧だけでなく、市町村立図書館に専門的な本を貸し出したり、図書館員を育成したりする機能もある。 全国約7千の個人、施設でつくる全国組織・日
県内屈指の専門書を有する県立図書館2館について、県教育委員会は7日、横浜市内の1館に図書所蔵機能を集約し、閲覧・貸し出しサービスは廃止する方向で検討していることを明らかにした。川崎図書館は廃館となる見通し。県緊急財政対策に基づく施設見直し計画の一環で、今後は市町村立図書館の機能を補完する事業に特化させる方針だ。都道府県立図書館を県民が直接利用できなくなるケースは例がないという。 県教委は、県立図書館の役割として▽図書の相互貸借システムの運営▽司書の研修▽専門書の収集-などを列挙。県内の公立図書館は、全33市町村で40年ほど前の約4倍に当たる75館が整備されていることから、「閲覧や貸し出し業務は県民に身近な市町村が担うべき」との考えを示した。 県立図書館2館の蔵書計約104万冊は、公立図書館など112機関が加入する「県図書館情報ネットワークシステム」(KLネット)を大学や企業に拡充し、各
明治期から現在までの漁業史を伝える宮城県気仙沼市の古文書が、東日本大震災の津波による汚損と「一時避難」を経て、3日に1年5カ月ぶりの「帰還」を果たす。神奈川大(横浜市神奈川区)の研究所が昨年から修復を主導し、新たな収蔵庫も設計中。4日には住民向けの現地報告会を開き、地域の記憶を生かした復興の形を語り合う。 古文書は、気仙沼湾内にある離島・大島の漁業協同組合が1903(明治36)年の創立当初から欠かさず蓄積してきた。漁協の成立や変遷をたどる、ひとまとまりの資料として一級品といわれる。しかし、震災で2階建ての漁協事務所もろとも津波の直撃を受け、泥や塩分まみれになった。 救出に当たったのが同大の日本常民文化研究所(常民研、佐野賢治所長)だ。前身の財団法人時代の50年代から、水産資料の調査を通じて同漁協と交流があった。 昨年5月、教職員や大学院生ら49人が現地入りし、古文書一枚一枚の汚れを除
相模原が市制移行した1954年前後の歴史的な公文書の公開が3日、市役所本庁舎本館1階ロビーで始まった。市名の変遷や市議会の成り立ちに触れた記述が見られる。わがまちの原点に、立ち止まって見入る市民の姿も多い。観覧無料で21日まで。 「いにしえは人煙稀少荒漠たる原野が続き…」。往時をしのぶそんな記述が残るのは、市制移行直前に相模原町議会がまとめた最後の会議録。市名を「相模原市」、市施行予定年月日を「昭和二十九年十一月二十日」とすることなどが記されている。 歴史的公文書の保存の重要性を伝えるとともに、市民に地元への愛着を深めてもらおうと企画。旧津久井郡の青根村の「村会議案議決書」や「村条例許可証」など歴史をたどる手掛かりとなる公文書計6点が展示されている。情報公開制度を利用しないと見られないものばかりで、一般向けの展示が初めてのものもある。 市には公文書管理のあり方を定めた条例がなく、制定
県の財政再建策を検討してきた外部会議「県緊急財政対策本部調査会」(神奈川臨調・座長=増田寛也元総務相)は17日、歳出抑制や財源確保の方向性を盛り込んだ最終意見をまとめた。「県有施設の原則全廃」や「補助金の一時凍結」を打ち出した中間意見に「課税自主権の活用」などの増収策が追記され、近く黒岩祐治知事に提言する。県は提言に基づいた視点で見直し対象を絞り込み、県民意見を踏まえた上で来年度予算に反映させる考えだ。 最終意見は、7月にまとめた中間意見に補足した格好。焦点となっている県有施設の原則全廃や補助金の一時凍結による見直し-といった提言は、すでに県としての方針が示されていることもあり、表現を含め修正しなかった。 一方で県独自の取り組みとして新たに盛り込まれたのは、自主財源確保に向けた施設使用料の見直しや課税自主権の活用など。課税自主権に関しては住民税所得割の税率引き上げを例示し、「発動のタブ
東日本大震災で被害を受けた歴史 資料の保全活動を続ける「山形文化遺産防災ネットワーク」の小林貴宏代表(40)が2日、横浜市中区で講演した。「地域の宝」を守る活動の意義を強調した上で、「これからも継続した取り組みが必要。作業人員を確保するため、仕事や勉強と両立しながら関われる仕組みをつくっていきたい」と話した。 講演会は、横浜を拠点に津波に浸った写真の清掃や保管を進める「陸前高田被災資料デジタル化プロジェクト」(内田剛史事務局長)が企画。主に紙の資料を扱う同ネットワークと連携し、文化財の保護に取り組んでいる。 同ネットワークは震災直後から、岩手、宮城、福島、茨城各県の博物館や学校に所蔵されている書籍や古文書、文集などを山形に持ち帰った。傷みが進行しないよう、水分を含んだページを慎重に開き、一つ一つはけで汚れを除去。これまで社会人や学生ら多くのボランティアが作業してきた。 講演会で、小林
県財政の再建に向けた意見をまとめる県の外部会議「県緊急財政対策本部調査会」(神奈川臨調=座長・増田寛也元総務相)は26日、全ての県有施設について「3年間で原則廃止する」との方向性を打ち出した。県が所有を続けず、維持管理にも関わらないことを基本方針にし、補助金に関しても「全て一時凍結して見直すべき」と指摘。都内で開いた会合で全メンバーの意見がまとまった。7月の「中間まとめ」で明文化し、黒岩祐治知事に提言する。 2回目となる臨調の議論では、県が施設を所有する必要性について、耐用年数などを踏まえた財政負担の視点で検討した。対象は県立図書館など県民利用施設(107施設)のほか、県税事務所や保健福祉事務所といった出先機関(132機関)、社会福祉施設(15施設)などで、学校と警察を除く全施設とした。 増田座長は各委員から出された意見を総括し、「基本は原則全廃。県は(維持管理に)関わらないという強い
明治期の女学生が描いた約700枚の日本画が、県立横浜平沼高校(横浜市西区)で見つかった。同校では当時、のちに日本画家として大成する松岡映丘(1881~1938年)らが熱心に指導に当たっていた。同校は27日から明治期の生徒の作品や教師らの資料を展示し、特色の一つである美術教育の歴史を紹介する。 日本画は、1901年に県立高等女学校として開校した1期生から8期生までのもの。92年に現校舎を新築した際、旧校舎の美術室から発見されていたが、昨年になって同窓会の歴史資料委員会のメンバーが整理した。 同委員会では、図画に添えられた草書体の名前を古文書の専門家らに解読してもらった上で、同窓生名簿と照らし合わせ、女学生の在校時期を確認。創立当時の作品と判明した。 作品はB4判より少し大きめの和紙に描かれた日本画で、果物や花を写実的に描いた写生画や、教科書などを手本に和服姿の女性の後ろ姿などの同一題材
1498年の明応東海地震で大仏殿に津波が至ったとの記録がある高徳院(鎌倉市長谷)で5日、津波堆積物調査が行われた。地中から採取した土に、海から流されてきた砂や化石などが含まれていないか詳細に分析する。 同院は海岸から約800メートルに位置し、海抜は12メートル。紀伊半島から房総にかけて押し寄せたとされる明応東海地震の津波が、大仏殿にも到達したとの記述が古文書に残っている。 調査は、東日本大震災を受けて県が進めている浸水想定範囲見直し作業の一環で、古文書の記録を裏付けるのが目的。ただ、一帯は古くから生活の場となってきたため、土地が改変されるなどして痕跡が見つからない可能性もある。 この日は3カ所でボーリング調査を行い、地表付近から深さ4メートルまでの土を採取した。今後、含有物とそれが形成された年代を特定する。 県の新たな試算では、最大級の津波が起きると、大仏周辺も浸水する可能性が高い
全国でも数少ない貝専門の博物館「真鶴町立遠藤貝類博物館」(同町真鶴)で、東日本大震災の津波で傷ついた貝類標本の修復作業が進められている。一つ一つ丁寧に洗浄するのは、岩手県陸前高田市海と貝のミュージアムの所蔵品。28日から第2弾の作業が始まり、同博物館担当者は「息の長い支援を続けていきたい」と話している。 国内屈指のコレクションを誇っていた海と貝のミュージアムは巨大津波で水没し、所蔵品の大半が泥混じりの海水をかぶった。 同博物館が今回の修復で対象とする標本は、前回(9月)の3倍近い1680点。泥が付いたままの巻き貝や角貝、二枚貝を袋から取り出し、一つ一つ洗浄して薬液で殺菌していく。「単純作業ですが、専門知識が必要」と山本真土学芸員(30)は説明する。 例えば、貝殻を覆っている「殻皮」と泥の汚れは知識がないと見分けがつかない。歯ブラシで一緒にこすると、殻皮が剥げて貝殻が傷みやすくなってし
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