日本美術というと、畏まって見なければならないと思っている人(最近少数派ではないかと思うけれど)もいるかもしれない。実際、展覧会場で作品についてああでもない、こうでもないと話をしていると、監視員に注意されることも少なくないので、「無言で畏まって見ろ」という圧力もないわけではない。 その一方で、映画やテーマパークと同じ土俵で真っ向勝負しても負けない、という自負の下に企画される展覧会もある。いま東京国立博物館で開催されている、特別展「京都 洛中洛外図と障壁画の美」だ。 「京都でも見ることのできない京都」と銘打たれた今展の狙いは、現在では失われてしまった過去の京都の景観や空間を、美術作品とそれを補完する映像で「体感」しよう、というもの。京都というと、反射的に「平安時代」「『源氏物語』の舞台」と思ってしまうかもしれないが、ここでは室町時代末期から江戸時代初期、現在見る京都の原型が形作られていく時代に