論文を読んでいると、毎日毎日私の思いもかけないことを真剣に研究している人がいて、人類としての無限の知識が形成されているのを実感する。読んでいる論文が私のようにほぼ生命科学に限局されている場合、この知識の無限性は生命の進化過程の壮大さへの畏敬に直結する。種の起源の最後のセンテンスでダーウィンは、生命を進化の観点でとらえることを「There is grandeur in this view of life….(この生命の見方には壮麗さがある)」と言ったが、論文を読んではこの言葉を思い起こしている。 今日紹介するスイス・ローザンヌにあるEPFLに在籍する日本人研究者春本さんの論文も、まさに進化の壮麗さを感じる話でNatureオンライン版に掲載されている。タイトルは「Male-killing toxin in a bacterial symbiont of Drosophila(ショウジョウバエの